2021/1/23

【エマニュエル・トッド】日本再生のカギは「完璧主義からの脱却」だ

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現代を代表する知識人として、その発言が常に注目されるエマニュエル・トッド氏
昨年刊行された著書『大分断』(PHP新書)では、「教育」が世界にもたらす「階級化」の問題に警鐘を鳴らすと共に、少子高齢化にあえぐ日本の未来にも提言を行っている。
インタビュー後編では、トッド氏に歴史家・文化人類学者の視点で、今の日本が抱える問題点を読み解いてもらった。

「生産」より「出産」を優先せよ

私が見るところ、「人口減少」は日本が抱える最大の問題というより、むしろ唯一の問題と言い切ってもいいくらい、異常な問題です。
日本(同じく少子化に悩むドイツや韓国もそうですが)について私が思うのは、経済状況の改善にばかり注力しているのではないか、ということ。物事を考えるときに、経済的な観点に支配されるのは、ネオリベラリズムが陥りがちな落とし穴です。しかし、私の専門である人口学の観点からすれば、社会が前進するには(経済的な意味での)「生産」の前に「出産」が必要です。
少子化が進んでいる国が、いかに経済を効率的に回すシステムを持っていたところで、そこに何の意味があるのだろう? そう考えてしまうのです。
日本の少子化対策としてまず必要なのは、文化的な意味での、女性の地位向上でしょう。女性が普通に仕事をして子どもを産める社会を実現するには、ただ「働きやすい環境」を整えるというにとどまらず、男女の役割がシャッフルされるような大変革が起こらなくてはなりません。