2021/1/23
【大問題】なぜ、スマホがあると「脳」は集中できないのか
私たちの生活に欠かせないスマホなどのデジタル機器が脳に与える影響を指摘した『スマホ脳』(新潮社)が話題だ。2020年11月の発売から2カ月で累計発行部数22万部を突破し、異例の売れ行きを見せている。
スマホへの過度な依存が、睡眠不足や鬱(うつ)、集中力や記憶力の低下と関連していると指摘した本書は、スマホが手放せない人々に共感と衝撃を与えている。
他方で、スマホは連絡や情報収集などを効率化する重要なデバイスであり、生活から切り離すことが難しいのも確かだ。
では、私たちはスマホとどう付き合っていけばいいのだろうか。
NewsPicks編集部は、『スマホ脳』の著者であるスウェーデンの精神科医アンデシュ・ハンセン氏と、プロピッカーで神経科学者の大隅典子・東北大学副学長・教授による対談を実施し、スマホによって脳がどんな影響を受けているのか語ってもらった。その様子を前後編でお伝えする。
前編は、スマホの存在によって誰もが直面しているマルチタスクの問題と記憶力の低下、そしてSNSとの付き合い方について論じてもらった。
スマホは進化にどう影響するのか
──スマホと脳の関係に着目したきっかけは何ですか。
ハンセン 私は昔から「進化」という現象に興味を持ってきました。人間の知性や健康が進化の過程でどのように形成されてきたのか、それが現代ではどのような悪影響をもたらしているのかに、とても興味があります。
例えば、人間はカロリーの過剰摂取に対して脆弱です。現代では、これが原因で2型糖尿病を患う人が多くいます。また、気が散ってしまうことに対しても脆弱です。
スマホは、これまでの歴史では見たことのない方法で、私たちの注意を引きつけることに成功しています。この10年間で起きた生活様式の変化は、未だかつてないスピードで進行してきたと言えるでしょう。
なぜこのような変化が起きたのか、なぜ、人々はスマホを肌身離さず持っているのか、スマホを使い続けることで私たちはどうなってしまうのか。そういったことにとても興味があります。そして、それを科学的な側面から分析していきたいと思いました。
私は決して現代のテクノロジーの価値を軽視しているわけではありません。スマホを含むデジタルテクノロジーは素晴らしい技術です。
これらのテクノロジーが私たちの生活の大きな助けとなっていることは、みなさんご承知の通りです。
だからこそ、私はスマホの裏の側面を明らかにしたかったのです。スマホの悪影響を伝えることで、皆さんがよりスマホについて理解できると思っています。
大隅 私は神経科学者として、マウスを使った実験を通して脳の発達や、自閉症のような神経発達疾患など脳の病気の研究をしています。
通常、スマホが脳に与える影響を分かりやすく解説するのは非常に難しいことです。スマホという小さなデバイスがどのように私たちを魅了して、なぜ多くの人がスマホ中毒になっているのか、『スマホ脳』を通して驚かされました。
報酬系をハックする
──私たちは生活のあらゆる場面でスマホを使用していますが、スマホに依存するとどのような影響があるのでしょうか。
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