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資生堂は、ドラッグストアやスーパーなどの量販店向けに展開する低価格帯の日用品事業を、欧州系大手投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズに売却する方向で最終調整に入った。売却価格は1500億ー2000億円の見込み。事情に詳しい複数の関係者が匿名を条件に明らかにした。

事業売却が報じられると、資生堂は2021年上期(1-6月期)をめどにアジアを中心にグローバルで展開するパーソナルケア事業をCVCに譲渡し、新会社に株主として参加することを検討していると発表した。

同社は今後も事業ポートフォリオの見直しを進め、デパートや化粧品専門店などで販売する収益性の高い高価格帯ブランドや、デジタル技術を活用した非対面販売に経営資源をシフトし、業績の回復と成長路線への回帰を目指す。

売却するパーソナルケア事業は増益基調を維持しているが、競争激化などを踏まえて非中核事業と位置づけた。14年に同社初の「プロ経営者」として社外から社長に就任し、大胆な改革を進めてきた魚谷雅彦氏の真価が問われる大きな決断となる。

同事業には、へアケアブランドの「TSUBAKI(ツバキ)」や、低価格帯のスキンケア、ボディーケア商品などが含まれる。複数の関係者によると、同社は近く取締役会を開いて正式決定する方向で調整しているという。CVCは外部PR会社を通じてノーコメントとした。

 同社株は22日、売却報道を受けて前日比4.4%高の7072円で寄り付いた後、一時6.5%高の7218円と昨年11月10日以来の日中上昇率となっている。

岡三証券アナリストの大花裕司氏は、同事業の売却は妥当と指摘する。「魚谷社長は以前から資生堂は1000円以下の商品を手がける会社ではないと語っており、パーソナルケアの売却はあり得ると思っていた」とした上で、「今回はブランドの見直しに踏み込み、他の地域の構造改革も進むのではないか」との期待感を示した。

ジェフリーズ証券アナリストの宮迫光子氏は、株価に非常にポジティブと評価。早期に売却に向けて動き出したことは新型コロナウイルスの感染拡大の影響との見方を示し、「コロナ前も経営にスピード感はあったが、さらにスピードを上げてやらねばならない状況になった」と指摘した。

19年12月期のパーソナルケア事業の売上高は約1000億円と全体の1割弱を占めた。CVCは同事業が中国やアジアで高い競争力を持つと判断し、同ファンドの持つネットワークを利用することでさらに事業価値を高める狙い。

ブルームバーグがアナリスト18人の予想を基に集計した資生堂の前期(20年12月期)の営業損益は40億円の赤字(前の期は1138億円の黒字)。同社は昨年5月、20年1-3月期の決算発表を受けて非中核事業の売却など抜本的な構造改革の方針を打ち出していた。

近年、海外のプラベートエクイティ・ファンドが国内企業の非中核資産の積極的な買い手として急速に存在感を高めている。

昨年、米ブラックストーン・グループが武田薬品工業の一般用医薬品事業を約23億ドルで買収することで合意しており、同ファンドが手掛けた買収案件で国内最大規模となった。また、米カーライルは昨年3月、日本国内での事業買収用ファンドで2580億円を集めており、その前の調達時の2倍以上の規模となった。

 

(資生堂の発表とアナリストの見解を追加して更新します)

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