2021/1/22

【エマニュエル・トッド】「ビジョンなきエリート」が世界を壊す

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近年、「民主主義の危機」が盛んに指摘されている。昨年の米大統領選挙で見られた混乱は、そんな時代を象徴する出来事だったと言えよう。
民主主義の危機という文脈で、決まって槍玉に挙げられるのは「大衆」だ。無知な大衆がポピュリズムを扇動し、社会の分断をあおっている──と。
しかし、「分断」の原因は「大衆」ではなく、むしろ「エリート層」のほうにある
──そう指摘するのは、現代を代表する知識人である、歴史家・文化人類学者のエマニュエル・トッド氏。昨年刊行された新著『大分断』(PHP新書)も、大きな話題を呼んだ。
問題の根源は、エリート層を輩出している「高等教育」(日本では、学士=4年制大学の学部修了レベルに相当)にあるとトッド氏は言う。この問題を正しく認識せずして、分断の緩和はありえない、と。
コロナ禍の痛みを乗り越え、世界が少しずつ再生に向かおうとしている今、トッド氏の提言から、新しい世界に必要な視座を学びたい。
エマニュエル・トッド
1951年フランス生まれ。歴史家、文化人類学者、人口学者。ソルボンヌ大学で学んだのち、ケンブリッジ大学で博士号を取得。各国の家族制度や識字率、出生率、死亡率などに基づき現代政治や社会を分析し、ソ連崩壊、米国の金融危機、アラブの春、トランプ大統領誕生、英国のEU離脱などを予言。