[19日 ロイター] - バイデン次期大統領が財務長官に指名したイエレン前連邦準備理事会(FRB)議長は19日の指名承認公聴会で超長期債である50年債の発行を検討する考えを示した。ただ、アナリストによると、市場参加者は抵抗感を示す可能性がある。

米上院財政委員会が開いた公聴会で、イエレン氏は50年債発行に関する質問に対し、発行の可能性や同年限の国債の潜在的な市場について検討することに前向きだと回答し、長期債発行にはメリットがあるとの認識を示した。

しかしアナリストは、米財務省が実際に超長期債の発行を検討した場合、これまでと同様、需要が十分にないという結論にたどり着くだろうと指摘。

ソシエテ・ジェネラルの米金利戦略部長、スバドラ・ラジャパ氏は「50年債には自発的な買い手が存在しない。米国ではこれまで何回も検証されてきた」と述べた。

歴史的な低金利を受けて海外の政府は超長期債発行に踏み切っており、ムニューシン現財務長官も超長期債の発行を何度か検討した。

ただ、銀行や機関投資家で構成される米国債発行諮問委員会(TBAC)が超長期債発行を推奨したことはなく、2017年のプレゼンテーションで「米市場で超長期債に著しく強いまたは持続的な需要があるとの証拠は見当たらない」と結論づけた。

TBACを含む米証券業金融市場協会(SIFMA)からコメントは得られていない。

超長期債の発行で課題となるのは、需要を喚起するために政府がインフレ加速などのリスクを踏まえて大幅な上乗せ金利(プレミアム)を支払わなければならないということだ。

TD証券の金利アナリスト、ゲナディ・ゴールドバーグ氏は「理論上はこれだけの借り入れを確保するのは非常に良い考えだが、実際の需要や対価を考えるとそれほど良い考えではなくなる」と述べた。

米国以外の政府は長期債の発行を増やしているが、米国の事情は異なる。

例えば、欧州では保険会社や年金基金が資産と負債のマッチングを義務付けられており、超長期債の需要創出につながっている。しかしゴールドバーグ氏によると、米国では年金基金の多くは期間50年前後の負債はなく、資産についても高いリターンを求めて社債などの高リスクなものを志向する傾向にあるという。

米財務省は昨年、超長期債よりも20年債に需要があるとの市場の意見を踏まえ、1986年以来初めて20年債を発行している。