[ジュネーブ/ロンドン 19日 ロイター] - 世界保健機関(WHO)の独立調査委員会は19日、旧ソ連で起きたチェルノブイリ原子力発電所の事故が国連傘下の国際原子力機関(IAEA)の改革につながったように、新型コロナウイルスによるパンデミック(世界的大流行)でWHO改革が後押しされるとの認識を示した。

WHOは新型コロナ感染拡大への各国の対応などを検証するために 独立調査委を設置。ニュージーランドのクラーク元首相やアフリカ・リベリアのサーリーフ元大統領らが率いている。

同委員会は、WHOに十分な資金と権限がないとし、パンデミックに有効的に対応するためには根本的な改革が必要と指摘。共同委員長を務めるサーリーフ氏は記者会見で「WHOは責任の所在を指摘するために存在しているのではない。世界各国がより迅速に、より効果的に対応できるよう具体的な助言を行うためだ」と述べた。

その上で「加盟国はWHOに主導権を発揮するよう求めたが、期待された責務を果たすために十分な資金と権限が与えられていなかった」とし、WHO改革に余地があるとの考えを示した。

パンデミック発生を受け、欧州連合(EU)のほか、米国やオーストラリアを含む多くの国がWHO改革の必要性を提唱。サーリーフ氏とともに共同委員長を務めるクラーク氏も、加盟国に助言を実行させ、感染症発生源となった国・地域に調査団を派遣する権限が著しく欠如しているとこれまでも繰り返し訴えている。

独立委は、WHOの資金拡充と国際的な公衆衛生上の規則を加盟国に順守させる権限の拡大に向け、194の加盟国が迅速に改革を推し進める必要があると指摘。クラーク氏は、新型コロナによるパンデミックは「WHOと世界の公衆衛生システムに対し、チェルノブイリ原子力発電所事故のような役割を果たすのだろうか」とし、感染症が急速に世界に拡大する時代に即した改革の重要性を訴えた。

WHOは18日、中国政府が新型コロナ流行初期の昨年1月時点で感染拡大阻止に向け、より強力な措置を講じることが可能だったとする中間報告書を公表した。

この日のWHO執行理事会会合で中国代表のSun Yang氏は、新型コロナ感染が初めて報告された湖北省武漢市での初期対応は適切だったとし、独立委の報告書の一部は「事実と異なる」と反論。

「当局は換気のない場所や多くの人で混雑する場所は避けるよう助言したほか、外出時のマスク着用も推奨した。武漢市は2020年1月1日に(発生源と考えられた)海鮮市場を閉鎖した」とし、新型コロナの病原性や感染力の強さがまだ判明していなかった時点で中国当局がこうした「異例の公衆衛生上の措置」を取ったことで、「中国、および世界各国がウイルスと戦うための貴重な時間が確保できた」と述べた。

WHO改革には米国と欧州連合(EU)が支持を表明。米代表を務める厚生省のギャレット・グリグスビー氏は、加盟国が中心となってWHO改革を断行する必要があると強調。「WHOや広範な国際制度に対し、効率性や独立性、透明性の高い作業を行うためのツールを提供することはわれわれの責務であり、パンデミックと闘い経済を回復させるためにも、この機会を逃してはならない」と述べた。

ドイツ代表のBjoern Kuemmel氏も、世界的な公衆衛生問題への対応に「共通の責任と投資」が必要との考えを示した。

*内容を追加しました。