《独自》日銀、デジタル通貨で第2段階の実証実験へ

日本銀行本店=東京都中央区
日本銀行本店=東京都中央区

 日本銀行が3段階を想定しているデジタル通貨の実証実験で、第2段階を令和4年度春にも行う方針であることが19日、分かった。3年度の早い時期に始めるとしている第1段階の実験を1年程度行った上で第2段階に移行する。その後、最終的に第3段階の実験を行い実用化を検証する。日銀は現時点で「デジタル通貨を発行する計画はない」との立場だが、先行する中国や欧米の動向をにらみつつ、環境が変化し導入が必要になった場合に備える。

 国の中央銀行が発行するデジタル通貨は、CBDC(セントラル・バンク・デジタル・カレンシー)と呼ばれる。Suica(スイカ)など民間の電子マネーもデジタル通貨の一種だが、使える場所が加盟店などに限定される。ビットコインなどの仮想通貨もデジタル通貨だが、使用できる店が限られ、中央銀行の保証もない。

 これに対し、中銀が発行するCBDCは誰でも、どこでも使える決済手段になると期待されている。

 3年度の早い時期に始める第1段階の実験では、発行や流通といったCBDCの基本機能に関する検証を行う。第2段階では、保有金額に上限を設定できたり、通信障害といった環境下でも利用できたりするかなど、通貨に求められる機能を試す。第2段階の具体的な期間については明らかにしていない。第3段階では実際に民間事業者や消費者が参加して、実用に向け実験を行う計画だ。

 日銀は当面、現金の流通が大きく減少する可能性は高くないとみている。しかし、デジタル通貨は現金と違って輸送や保管などのコストがかからないメリットがある。また、CBDCは個人や企業の決済や取引を記録することも可能になり、脱税やマネーロンダリング(資金洗浄)を防止しやすい利点もある。

 逆に言えば、取引情報や個人情報の保護といった課題もある。日銀は実証実験と並行し、こうした課題を踏まえてCBDCの制度設計を検討していく方針だ。

 欧州や米国もデジタル通貨の発行を視野に入れ、研究を進めているほか、中国は「デジタル人民元」の試験運用を始めている。

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