[東京 19日 ロイター] - 新型コロナウイルスの感染拡大と緊急事態宣言の再発令で日本経済の下振れリスクが高まるなか、与党内から新たな経済対策を求める声が生まれている。これまでの対策は足元の緊急事態宣言による消費抑制を盛り込んでないとして、政府への提言をとりまとめようとする動きも一部で出ている。

自民党では18日午前、下村博文政調会長が呼びかける形で経済成長戦略本部という名称の会合が開催された。報道関係者に非公開だったが、出席した議員らによると、政府の既存のコロナ対策は不十分で、10月までの時期に実施される衆院選に響きかねないとの声が複数出たという。

政府は昨年12月、総額事業規模で73.6兆円、財政支出で40兆円の経済対策をまとめた。しかし内訳をみるとコロナ感染拡大防止は5.9兆円にとどまり、コロナ後の経済構造転換に18.4兆円、国土強靭化に5.6兆円と、コロナ終息後の景気対策・成長力強化を主眼としたメニューが目立つ。計画立案時点ではコロナ第3波の拡大がここまで悪化するとは想定できていなかったことが大きい。

会合に出席者した安藤裕議員は、現行のコロナ対策は全く不十分で、衆院選に響きかねないと指摘。収入が急減する事業者に対する粗利補償の必要性を強調する。

山本幸三議員は会合で「政府の経済見通しが甘すぎる。経済対策策定時点ではプラスを見込んでいた今年1─3月の国内総生産(GDP)がマイナス成長に陥るのは確実」と指摘。「20─30兆円の追加の財政出動が不可欠で、(20年度)4次補正でも(21年度)1次補正でも構わない」と提唱したと19日、ロイターに話した。

山本氏によると、全国民一律に10万円を支給する特別定額給付金の再支給を要望する議員も複数いたという。また下村会長は、これらの意見を取りまとめ、政府に対する提言とすることに前向きな姿勢を示したという。

これとは別に公明党も、現行の経済対策は緊急事態宣言の発出を織り込んでないとして、「貧困家庭や、緊急事態で新たに苦しくなった事業者の支援策を近く提言として取りまとめる方向」(幹部)という。

これに対し、政府サイドは、通常国会では25日から予算委員会を開催し、3次補正、特措法改正、21年度本予算の順に審議し、3月2日までに本予算の衆院通過を目指している。

野党はGoToなどの観光支援策に充てる予算も含まれていることを問題視し、3次補正予案などの組み換えを要請しているが、麻生太郎財務相は12日の閣議後会見で、「今の段階では(組み換えは)必要ない」としている。

実際、当面の追加支出は「20年度の予備費(残額4兆円弱)や21年度予算に計上される予備費5兆円などで対処する」(財務省幹部)という姿勢だ。「4次補正の作成・審議は時間的に無理で、どうしても追加対策が必要な場合は21年度1次補正だろう」(政府高官関係者)との声もある。

もっともコロナ対策が後手との批判や内閣支持率の急落は政権中枢にとっては最大の懸念事項で、ある官邸関係者も「コロナがどう終息するか全く読めないなかで、政権に対する地元の声は大変厳しい。後手後手と言われても仕方ないが、必要な追加対策は議論になるだろう」と指摘している。

(竹本能文 編集:石田仁志)