2021/2/1

【激論】東京五輪世代は「日本サッカー」をどう見ているのか

スポーツライター
Z世代が注目を集めている。1990年代中盤から2000年代初めに生まれたこの層は現在10代後半から20代前半の、いわゆる「若手」だ。
物心がついた時には「スマホ」があり、それを覗けばYouTubeもSNSもある。「世界」が目の前にあったのだ。スポーツ界に影響がないわけがない。
新たな若手像について、気鋭のスポーツジャーナリスト・木崎伸也がサッカー界注目の2人に聞く。
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最近、サッカー日本代表の人気がじわじわ落ちてきている。
 昨年、欧州で日本代表が親善試合を行った際にはなかなか中継局が決まらず、11月のメキシコ戦は地上波で中継されなかった(NHK BSのみが中継)。キックオフが早朝だったとはいえ、もはや「国民的なキラーコンテンツではなくなった」という現実を突きつけられた。
 森保一監督の発信力が弱く、わかりやすいキャッチコピーがない? ハリルホジッチ監督解任の真相が明かされておらず、日本サッカー協会に興ざめした? 世代交代が進まず、顔になる選手がいない? いろんな理由が絡み合っているだろう。
 人気低迷に関係していると思われるのが、日本代表の若い世代、いわゆる「Z世代」(90年代中盤以降生まれ)のおとなしさだ。スマートで器用で行儀がいいが、その分、一人ひとりの色を見いだしづらい。一般に名前を知られているのが久保建英くらいなのはそのためだろう。
 小野伸二・稲本潤一・高原直泰ら「黄金世代」(シドニー五輪)のような派手なイケイケ感や、本田圭佑・長友佑都・岡崎慎司ら「谷底世代」(北京五輪)のような泥臭い雰囲気は漂わせていない。日本代表で下克上が起こりそうな空気は…感じられない。
 だが、NiziUや『鬼滅の刃』のブームを見て、ふと気づいた。
 そういう見立ては、オジサン世代の記者が時代遅れの色メガネをかけているからではないか、と。
 東京五輪代表でキャプテンを務める中山雄太(オランダ1部・ズヴォレ、23歳)と、チームのムードメーカーである菅原由勢(オランダ1部・AZ、20歳)に対談を申し込むと、予想もしなかった言葉が飛び出てきた。
「金メダルは簡単なものではないとわかったうえで、野望はさらに高いところにある。金メダルも過程として考えさせてもらってますね」
 日本サッカーZ世代は何を企んでいるのか? 5つのテーマで聞いた。

1)Z世代が見る日本サッカー「個が足りない」

──今日はリモート対談に参加していただきありがとうございます。僕は46歳のオジサン世代なのですが、ふと「日本サッカーへの見方が古くなっているかも?!」と思ったんですね。
中山雄太(以下・中山) 逆にどういう見方をしてます?
──2014年W杯前から「日本らしいサッカー」というキーワードが出てきて、俊敏性やショートパスを生かして攻撃的なポゼッションサッカーを目指そうというのが主流になった。体は小さくても技術で勝つという考え方です。
中山 なるほどね。
菅原由勢(以下・菅原) 雄太くん、これ結構大事な話だよ。変なこと言ったら叩かれる。
中山 確かに日本人の特徴は組織の中で生きると思うんですが、それだけにもっと「個人」にフォーカスしてもいいと思います。個人で局面を打開したり、個人で解決したりするのをもっと要求していい。
 たとえばハリルホジッチさん(元日本代表監督)は「デュエル」(1対1の対決)という概念を持ち込みましたよね。昔はそこがないがしろにされていた部分があったと思う。