極右のトランプ派はいま何を言っているのか

アリスター・コールマン、BBCモニタリング

Donald trump speaking forcefully

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ジョー・バイデン次期米大統領の就任式を20日に控えて、ドナルド・トランプ米大統領の支持者の間では少し前まで、武装抗議に参加するよう促す呼びかけが広まった。しかし今では、参加するなという呼びかけがトランプ派の間で広まっている。当局が仕掛けた「わな」だというのが、その理由だ。

こうしたやりとりの一部は、あまり知られていない、簡単にアクセスできないオンラインのプラットフォームで行われている。今月6日の連邦議会襲撃以降、極右勢力や陰謀論のグループがフェイスブックやツイッターから追い出されたからだ。

ツイッターに似ていて、極右団体に人気のソーシャルメディア「Gab」では、首都ワシントンと50州の州都で大統領就任式を前に武装行動を呼びかける檄文(げきぶん)が拡散された。この計画を機に、連邦捜査局(FBI)は全国の警察組織に警戒を呼びかけた。

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しかしここ数日、考え直す人たちが出ているようだ。

トランプ派の陰謀論や過激で暴力的なコンテンツにあふれるウエブサイト「ザ・ドナルド」には、政権移行に抗議する集会に参加しないよう呼びかける投稿が続いている。「自分たちを破壊しようとする連中が仕組んだことだ」という内容だ。

サイトに投稿する人たちは予想通り、トランプ氏が再び弾劾訴追されたことに激怒している。特に、弾劾に賛成した与党・共和党の下院議員10人について、強い怒りをあらわにしている。

チャットツール「テレグラム」では、移民排斥の極右団体「プラウドボーイズ」も同じように、わなを警戒するよう呼びかけている。連邦議会襲撃ではプラウドボーイズのメンバーの参加が確認されている。

「(抗議集会で)プラウドボーイの服装の人間を見たら、それはFBIかアンティファだ」という投稿もあった。

一方で、「専制に反撃しろ」と呼びかけ、「政治的解決などない」と檄を飛ばす書き込みもあった。

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トランプ氏の熱烈な支持者の多くは、あらゆる証拠がその逆を示しているにもかかわらず、6日の議会襲撃は左派アンティファが仕組んだものだと信じ込んでいる。

加えて、トランプ派の間では疑心暗鬼も高まっている。右派SNSで公然と6日に暴力を働くよう呼びかけていたグループの間では、自分たちの間に政府の捜査員や左派活動家が潜入していたのではと懸念する投稿が増えている。

右派SNSの所有者や管理者は、暴力を扇動する内容を投稿しないよう、利用者に呼びかけるようになった。

A smartphone screen featuring a number of messaging apps

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画像説明, 主要SNSで活動できなくなったトランプ派は、代わりのオンライン・プラットフォームに移行している

しかし、民主党幹部のナンシー・ペロシ下院議長や、選挙結果を覆してくれるとトランプ派が頼みにしていたマイク・ペンス副大統領に対する、暴力的な脅迫は、今も幅広く続いている。

BBCモニタリングでイスラム過激主義を専門にするミナ・アル・ラミ記者によると、過激なトランプ支持者たちが活動の場を主要SNSから代替のプラットフォームに移しているのは、危険をはらんでいると指摘する。記者は、同様の取り締まり対象になったイスラム過激派と、状況が似ていると言う。

エンドツーエンド暗号化、つまり暗号化されたデータを利用者のみが見ることのできる、秘匿性の高い仕組みを使った閉ざされた空間を使うことで、「極右グループの動きを探知しにくくなる」と、アル・ラミ記者は言う。「野放図に過激化していく様子が監視できなくなる」。

それでは、根拠のない「Qアノン」陰謀論はどうだろう。この陰謀論によって過激化した大勢が、議会襲撃に参加した。

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大手SNS各社は議会襲撃を受けて、Qアノン系のアカウントを大量凍結した。しかしQアノン勢力は早くも別の場所に移行を済ませている。

「Gab」では、すでに16万5000人以上が参加するQアノン系のグループがある。同様に、「テレグラム」ではQアノン系チャンネルに5万人以上が登録している。

この陰謀論を信じる人たちはいまだに、大統領就任式の日にとてつもないことが起こり、選挙結果が覆され、トランプ氏が大統領として政権を握り続け、そして「ディープステート」の敵を一網打尽にするのだと確信している。

A Trump supporter wears face paint at a protest in Washington, DC

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画像説明, 「Qアノン・シャーマン」として知られるこの男性を含め、Qアノン信奉者が多く議会襲撃に参加し、逮捕・起訴されている

他方で、陰謀論を広めて暴力を扇動する可能性のあるアカウントは、意外な場所にも出現している。たとえば、若者に圧倒的人気のショートビデオ・プラットフォーム「TikTok」に、トランプ派の武装組織が大量の動画を投稿している。

過激主義やヘイト・グループを中心に研究する英シンクタンク「戦略対話研究所」のキアラン・オコナー氏は、武装組織がTikTokに投稿する動画には警戒が必要だと話す。

武装集団のメンバーが武器を用意したり、トランプ大統領が1807年の反乱法(アメリカ国内での軍投入権限を大統領に認める、ほとんど使われたことのない法律)を発動したりしたなどと虚偽を主張する内容が、利用者に拡散されている。

TikTokは投稿内容について運営側のチェックが遅い。過激派はこれを利用しているのだと、オコナー氏は言う。そのため規約違反で削除されるまでに、問題ある内容のビデオはかなり長いこと、TikTok上で再生されるし拡散される。

トランプ派グループの中でも特に暴力的で、激しい陰謀論を展開する勢力は、主要SNSから追い出されてインターネットのあちこちに分散した。だからと言って、消えてなくなったわけではない。

トランプ派の極右勢力は、自分たちがアメリカ当局に厳しく監視されていることは自覚している。しかし、そうした勢力は今、長い闘争に備えて態勢を整えているのだ。