全米50州と首都ワシントンで厳戒態勢 大統領就任式前の武装抗議を警戒

National Guard members walk at the Capitol in Washington on January 15, 2021

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画像説明, 米連邦議会議事堂を警備する州兵(15日、ワシントン)

アメリカのジョー・バイデン次期大統領の就任式を20日に控える中、暴力的な抗議行動が起きる恐れがあるとして、全50州と首都ワシントンが警戒態勢を敷いている

ドナルド・トランプ大統領とバイデン氏が争った昨年11月の大統領選をめぐっては、トランプ氏支持者が6日、選挙の結果認定を進めていた連邦議会の議事堂を襲撃し、5人が死亡した。こうした襲撃の再発を防ぐため、州兵が全米各地からワシントンへ派遣されている。

米連邦捜査局(FBI)は、50州の州議会議事堂で武装したトランプ氏支持者による抗議デモが起こる恐れがあると警告している。

ワシントン中心部の国立公園ナショナル・モールは閉鎖され、市内の通りにはバリケードが張り巡らされるなど、警備が強化されている。

警察は16日、拳銃2丁と未登録の実弾509発を所持し、議会警察の検問所を突破しようとしたとして、前日にヴァージニア州の男1人を逮捕したと明らかにした。男は「政府が発行したものではない資格証明書」を携帯していたという。

ドン・ベイヤー下院議員(民主党、ヴァージニア州選出)は「危険は本物」だとして、「連邦議会やモールの周りを今週避けられる人は、そうすべきだ」とツイッターで呼びかけた。

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バイデン陣営はすでに、新型コロナウイルスの感染症COVID-19対策として、就任式に合わせてワシントンへ来ないよう求めていた。地元当局はリモートで就任式を観覧すべきだとした。

トランプ氏支持者や極右のオンラインネットワークでは、17日の武装行動を呼びかける投稿が多数あった。このため警備が強化されている。

一部の武装集団は、厳重な警備が敷かれていることを挙げたり、計画されている抗議は警察の罠だと主張するなどして、抗議に参加しないよう呼びかけている。

Workers assemble barricades around the US Capitol

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画像説明, 1月20日のジョー・バイデン次期大統領とカマラ・ハリス次期副大統領の就任式を前に、議会議事堂周辺にバリケードが設置されている

6日の議事堂襲撃をめぐっては、下院が「反乱を扇動」したとして、ドナルド・トランプ大統領を弾劾訴追する決議案を可決した。トランプ氏は米大統領として初めて、2度の弾劾訴追を受けた。

今後は上院で弾劾裁判が開かれることになるが、上院は休会中ですぐに再開の予定はないため、トランプ氏は20日正午に任期を満了する見通し。

各州の対策

州議会議事堂の窓に板張りをしたり、集会の許可を出さないなど、各州が予防措置を取っている。

メリーランド、ニューメキシコ、ユタの各州知事は抗議行動が起きる可能性があるとして非常事態を宣言した。

カリフォルニア、ペンシルヴェニア、ミシガン、ヴァージニア、ワシントン、ウィスコンシンの6州は州兵を導入。テキサス州は16日から就任式が終わるまで、州議会の議事堂を閉鎖する。

Fence being erected around the state capitol in Lansing, Michigan

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画像説明, ミシガン州議会議事堂の周辺にフェンスが設置されている

テキサス州公安局のスティーヴン・マクロウ氏によると、「暴力的な過激派」が「犯罪行為」を行うため、州議会議事堂で計画される抗議活動に潜入する可能性があるという。

ヴァージニア州のラルフ・ノーサム知事は14日の記者会見で、「悪意を持ってヴァージニア州あるいはワシントンへ来ようとしているのなら、直ちに家へ引き返すべきだ。あなた方はここでも、我々の国の首都でも歓迎されない。ここへ来て行動を起こすのなら、ヴァージニアは準備ができている」と述べた。

アナリストたちは、選挙結果をめぐる対立が激化したり、争いが長期化した州では特に、暴力行為が起きる危険性が高いと考えている。そうした州の1つのミシガン州では、ランシングにある州議会議事堂の周辺に180センチ以上のフェンスが設置されている。

「我々は最悪の事態に備えているが、州議会議事堂で抗議する人たちが平和的なデモを行うよう望んでいる」と、ミシガン州警察のジョー・ガスパー氏は15日に述べた。警察の議事堂警備は少なくとも2月中旬まで強化されるという。

ミシガン州をめぐっては昨年10月、FBIが同州のグレッチェン・ウィトマー知事(民主党)の拉致を計画したとして、13人を逮捕した。捜査当局によると、武装集団は約200人の仲間を集めて州政府ビルに突入し、ウィトマー知事らを人質に取る計画だった。

フェイスブックは16日、米国内での銃関連や軍事関連用品の広告を一時停止すると発表した。同社サイトはすでに銃と弾薬の広告を禁止していた。

同社広報のリズ・ブルジョア氏はバズフィードに対し、「念には念を入れて、少なくとも1月22日までは米国内での銃関連用品や防護具を促進する広告を一時的に禁止している」と述べた。

フェイスブックのこの措置に先立ち、上院議員3人と州司法長官4人が「この国の民主主義よりも企業利益を優先する」のを止めるよう、フェイスブックに求めていた。