年末年始の大雪 背景に南米ペルー沖のラニーニャ現象 気象庁分析
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この冬シーズンの気候のパターンは確かにラニーニャ時に特徴的な分布となっていますが、記事のタイトルはちょっと安易かなと思います。直接的には極渦が安定せず分離してしまったという要素が大きく、まずはこちらのほうの影響をしっかり述べるべきだからです。エルニーニョとラニーニャは聞きなれた言葉なので記者も飛びつきたがりますが、気象庁ももう少し詳しく説明してあげたほうが良かったのかもしれません。
極渦とは、簡単に言えば北極が寒いから発生する、上空の低気圧のことです。寒い空気は縮こまるので、北極が一番へこんだような状態になります。そのような状態だとジェット気流がきれいに北極を中心に円を描きます。
ところが昨年来、あまり極渦が安定している場面を見たことがありません。たとえば初夏にあったシベリアでの極端な高温も、極渦が安定せずブロッキング高気圧という高気圧の居座った構造が長続きしたからです。
極渦が安定しない理由としては、その一つに北極海の海氷面積の減少があるのではという論文も出ていますが、今回もそれが強く疑われる状態となっています。北極付近が以前に比べて暖かくなった影響で極渦が安定せず、ジェット気流をうねらせるため、たまに緯度の低い地方まで極渦が南下し、強い寒気を連れてきてしまうことになります。地球温暖化が、思わぬところで一部の地域には寒冷化をもたらす事例ということも言えます。
ラニーニャは、こういった状況に少々花を添える程度の働きしかしていません。
ちなみにラニーニャについてはすでにピークを脱しつつあるとみられており、初夏にはほぼ中立に戻ると考えられています。また昨年はインド洋の影響も強く出ましたが、現時点ではインド洋も次回の梅雨シーズンにかけては中立を保つと考えられています。2021年は、海洋よりも極渦の動向に左右される夏になるかもしれません。