[フランクフルト 14日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)が14日公表した昨年12月の理事会の議事要旨で、貸出条件付き長期資金供給オペ(TLTRO)の銀行の借入枠引き上げを巡り、レーン専務理事兼チーフエコノミストの提案に一部メンバーが反対し、引き上げ幅が縮小されていたことが分かった。

ECBは12月、新型コロナウイルスの感染第2波に対応しユーロ圏経済を支援するため、追加の金融緩和策を発表。パンデミック緊急購入プログラム(PEPP) の規模を5000億ユーロ拡大し、期間を2022年3月まで9カ月間延長したほか、TLTROの期間も1年間延長し、銀行が借り入れられる合計額を各銀行の適格融資残高の55%に引き上げた。

要旨によると、レーン氏は借入枠を60%に引き上げることを提案したが、「銀行のユーロシステムへの依存度が高まることが懸念される」として多くのメンバーが留保を表明。55%への引き上げで大筋合意したという。

政策変更を巡り理事会メンバー間で意見が分かれることはしばしば見られるが、通常は会合前に意見の相違が解消されるため、チーフエコノミストの提案が変更されるのはまれ。提案より小幅な借入枠引き上げになったことは、超緩和政策の一部を巡って懐疑的な見方が高まっていることを示唆する。

<PEPP買い入れ>

PEPPの買い入れ規模拡大についてもメンバー間で意見が対立し、レーン氏が提案した5000億ユーロよりも少ない額を主張するメンバーと、それよりも多い額を求めるメンバーがいたという。

ロイターは昨年12月、理事会前の議論で7500億ユーロの拡大が取り上げられたと報じた。

要旨によると、買い入れ余地は依然大きいものの、不確実性の高い環境下では万一に備える必要があるとの判断から、「PEPPの買い入れ規模をより緩やかに引き上げることを多くのメンバーが支持した」という。

一方で、買い入れ枠拡大により各国政府によるPEPP依存の高まりやモラルハザード、市場機能の歪みなどを引き起こすリスクが懸念されるとした。

また、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)初期の市場暴落時には守られなかったが、国別の買い入れ枠を尊重することを求めた。

次回のECB理事会は21日に開催され、PEPPを含めた超緩和政策を維持するとみられている。