2021/1/15

WWWの父が描く「個人ファーストのネット社会」の未来図

本来のウェブ構想に回帰

およそ30年前、ティム・バーナーズ=リーはマルチメディア文書をオンラインで検索し、リンクし、提示するためのシンプルながら強力な規格を考案。その規格「ワールド・ワイド・ウェブ(WWW)」を無料で世界に公開した。
テック界で研究者や起業家が続々とビリオネアになるなか、バーナーズ=リーはウェブが人と人とをつなげ、万人に平等な情報共有ツールとして花開くのを助けるテクノロジー規範の守り手となった。
だが、65歳になった今、インターネットは道を踏み外したとバーナーズ=リーは考えている。あまりにも強大な権力とあまりにも膨大な個人データがグーグルやフェイスブックなどの巨大企業に集中しているからだ。
バーナーズ=リーはこうした企業を名前ではなく、「サイロ」と呼ぶ。蓄積した個人情報をバックに、テック系巨大企業は監視プラットフォームとなり、イノベーションを牛耳るようになったというのが、彼の見解だ。
各国の規制当局も同じ不満をあらわにする。カルフォルニアを筆頭とするアメリカの一部の州とEUは個人情報保護の規制を強化し、グーグルとフェイスブックは独占禁止法違反の罪で提訴された。
だがバーナーズ=リーのアプローチは異なる。彼が導き出した解決策とは、個人にもっと大きな力を持たせるテクノロジーの開発と普及だ。「そもそも私が作りたかった形」にウェブを近づけるのが目標だと、バーナーズ=リーは言う。
ティム・バーナーズ=リー(Lola and Pani/The New York Times)