なぜ頼りないリーダー? コロナでちぐはぐ対応続ける政権を考える

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新型コロナウイルスの感染拡大に伴う「緊急事態宣言」再発令決定後、記者会見に臨む菅義偉首相=首相官邸で2021年1月7日午後6時、竹内幹撮影
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う「緊急事態宣言」再発令決定後、記者会見に臨む菅義偉首相=首相官邸で2021年1月7日午後6時、竹内幹撮影

 つい1カ月前まで、旅行と外食を国民に推奨していたのは一体何だったのだろう。7日に緊急事態宣言を再発令した、菅義偉首相のことである。医療関係者から「GoToキャンペーン」への懸念の声が上がっても、「(感染拡大の主原因という)エビデンスは存在しない」と拒み、自らも会食にいそしんできた。それが一転、一時中断したと思ったら、今度は緊急事態宣言を再発令するという。前任の安倍政権時代には、「アベノマスク」に多額の税金を投じて批判を浴びたこともあった。なぜ政府はコロナ対策で、ちぐはぐな対応を取ってしまうのか。政治学者に読み解いてもらった。【大野友嘉子/統合デジタル取材センター】

強行したGoTo事業

 感染対策を小出しにしたかと思えば、収束からほど遠い状況下でとっぴな経済政策を打つ――。思えば乱高下するジェットコースターに乗っているような1年だった。改めて、これまでの政府の対応を振り返ってみたい。

 当時の安倍晋三首相が全国の小中高校に臨時休校を要請する考えを示したのは昨年2月27日だった。わずか4日後の3月2日に休校するよう求める唐突さで、学校現場や子育て世帯に混乱を与えたのは記憶に新しい。4月7日に7都府県での緊急事態宣言を発令(その後全国に拡大)したが、この時期に官邸主導で行ったのが、「アベノマスク」と呼ばれた布マスク2枚の全世帯配布だ。約260億円もの多額の費用と、配り終えるまでに2カ月以上もかかるという拙劣な対応が、国民の強い批判を浴びた。

 新規感染者数の減少などを受け、政府は5月25日に宣言を全面解除したものの、1週間後には東京都が感染状況の悪化を示す「東京アラート」を発令するなど、収束には遠い状況が続いた。そして感染者数がじわじわと増え始めた第2波のさなかの7月22日に政府が開始したのが、旅行代金の一部を補助する「GoToトラベル」だった。この時も、開始直前に東京都を対象から除外するなど、ドタバタの対応が続いた。

 このGoToキャンペーンの継続に、政府は第3波が始まった秋以降も固執し続けた。日本医師会の中川俊男会長が11月18日、GoTo事業が感染拡大に「間違いなく十分に関与している」と述べたのに対し、菅首相は衆院予算委員会で「感染拡大の主要な原因というエビデンスは、現在のところ存在しない」と反論。12月中旬にネットメディアに出演した際も「いつの間にかGoToが悪いことになってきちゃったんですけど、(新型コロナウイルス感染症対策分科会から)移動では感染しないという提言もいただいていた」と継続の意思を示していた。

 ところが、だ。12月12日に実施した毎日新聞の世論調査で、GoToトラベルを「中止すべきだ」との回答が67%に達し、内閣支持率が前回11月7日調査の57%から40%に急落すると、態度を一変させる。菅首相は12月14日、全国でのGoToトラベルの一時停止を表明。さらに年が明けると、東京など4都県の知事の要請に押し切られる形で、緊急事態宣言の再発令に踏み切った。

官邸主導を誤認、判断ゆがむ

 いくら前例のない事態とはいえ、失礼ながら一連の対応は「右往左往」という言葉がぴったりくる。実際、政府の危機対応能力に対する国民の評価は極めて厳しい。毎日新聞の12月の世論調査では、菅政権の新型コロナ対策を「評価する」と回答した人はわずか14%にとどまり、「評価しない」は62%に上った。安倍政権に対しても、昨年7~8月に英調査会社ユーガブが実施した国際世論調査では、政府のコロナ対応を「よくない」と回答した割合は73%に達し、調査した25カ国中で最悪の数字だった。国民の期待と政府の行動とのギャップがここまで大きいと、首相個人の資質だけでなく、構造的な問題にも思えてくる。

 こうした状況を専門家はどう見ているのか。日本政治が専門の学習院大法学部長、野中尚人教授に尋ねると、問題の背景には「二つの理由」があるという。

 「まずは、官邸主導の本来のあり方を誤解している政治家の存在です。特に第2次安倍政権では…

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