2021/1/12

【株価高騰】「再エネの巨人」にマネーが集まる理由

NewsPicks NY支局長
「王座」が変わった瞬間だった。
20世紀は「石油の世紀」と呼ばれた。世界中に散らばる石油権益を、「スーパーメジャー」と呼ばれる巨大資本たちが独占し、巨額の富を築き上げた。
なかでも、米エクソン・モービルは、1世紀以上にわたって頂点に君臨し続けた。GAFAなどのテック企業が台頭するまでは、エネルギー業界ではもちろん、世界中の企業でトップの時価総額を記録していた。
だが、今、そのパラダイムが大きくシフトしている。
2020年10月、エクソンは100年以上守り続けてきたエネルギー界の盟主の地位を明け渡した。米再生エネルギー企業の「NextEra(ネクステラ)」に時価総額で一時抜かれたのだ。
ネクステラの売上高は、エクソンの10分の1にも満たないにもかかわらずだ。
ネクステラは、米フロリダ州に拠点を置く電力会社だ。
1925年に創業後、州内に独占供給する電力会社にすぎなかったが、1990年代からの各州での規制緩和と再エネ促進策の追い風を受けて、一気に風力・太陽光発電で北米を席巻し、全米最大の再エネ企業へと成長した。
今やベルギー全体の電力需要をまかなえるほどの再エネ(約22GW)を擁するほどだ。
そして、このシフトはアメリカだけで起きているわけではない。
欧米では、それまで知られてなかったような企業群たちが、かつてその国の盟主だった石油企業たちを時価総額で追い抜くような事態が次々と発生している。
人呼んで「グリーン・ジャイアント」。
世界が脱炭素に進む中で、文字通り「再エネの巨人」が一気に登場しているのだ。
そして、興味深いのは、彼らはいずれもゼロから立ち上げたスタートアップではなく、旧来の化石燃料型のエネルギー企業だったのが、いち早く風力や太陽光のポテンシャルに張って、再エネ企業へと一気に舵を切ったことだ。
この動きは、ようやく日本にも伝播しつつある。
NewsPicks編集部では、再エネの巨人や、日本で、この世界のダイナミックなシフトをいち早く取り入れている企業への取材を敢行。そのパラダイムシフトの最前線をリポートする。

日本に降り立った「北欧の巨人」

「日本は、我々にとって重要な戦略的マーケットです」
NewsPicksの取材に対し、こう答えたのは、先述の巨人の一つ、北欧デンマークの再エネ企業Ørsted(オーステッド)の日本法人の笠松純社長だ。