2021/1/12

【核心】児童手当の「所得制限」は悪なのか

NewsPicks 記者
2020年の日本の出生数は86万5239人。戦後最低となった。
高齢者の人口割合が増え、社会保障の支出は急増。現役世代1人当たりの負担は年々重くなっていく。これから日本は、未だかつてない「少子高齢社会」を経験していく。
この状況を抜本的に変える方法は、はっきりと言ってしまえば「ない」。
ただ、社会保障制度の改革や移民政策など、この問題を「緩和」する方法ならいくつか思い浮かぶ。
その一つが、子どもを支援する政策だ。これによって出生率の低下を抑え、人口減のスピードを緩やかにしていく。
そうした中、子育て世帯を揺るがす改正が、2020年12月に決定した。児童手当に所得制限が設けられることになったのだ。改正で得られる財源は、待機児童の解消に充てられるという。
この改正は、大きな波紋を呼んだ。
「61万人の子どもが不支給になる」
「少子化がさらに加速してしまう」
「年収1200万円以上の世帯だって、子育てはとても大変だ」
このような見出しや文章が、SNSやニュースサイトに並んだ。NewsPicksでも、多くのコメントが寄せられ、改正に反対する意見が圧倒的に多かった
「児童手当に所得制限を設ける」という決定は、果たして正しかったのか。
これを知るには、児童手当のみならず、子ども政策全般、ひいては日本の財政全体の俯瞰が欠かせない。
所得制限が議論される背景には、財政上の問題があるかもしれないからだ。
本当に、日本の財政は高所得世帯の子どもに現金を配る余裕がないのか。慎重に、丁寧に考える必要がある。
取材を重ねる中で筆者が出した結論を先に述べてしまえば、「日本には財政的な余裕がなく、高所得世帯への児童手当の所得制限は仕方がない」だ。
その理由を、じっくり説明していく。