慰安婦訴訟で日本政府に賠償命令 韓国地裁、外交関係一層悪化へ
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この訴訟の根本的な問題が2つあります。
① 1965年の日韓請求権協定で、韓国国民の個人請求権は消滅していたのではないか、という問題
② 主権免除の原則からいえば、ある国の裁判所が他国の政府に命令(ここでは賠償命令)を出すことはできないのではないか、という問題
①については、従来は日韓両政府とも、個人請求権は消滅した、という見解でした。2018年の徴用工訴訟で、韓国の裁判所が韓国国民の個人請求権を認め、新日鉄住金に対して賠償命令を出しました。この徴用工というのは、1938年の国家総動員法によって強制的に労働に動員された(日本人の間では工場などでの学徒勤労動員が有名)というものです。同様の訴訟は、70社以上の日本企業に対して起こされています。
②ですが、これは、たとえば、日本の裁判所が、広島への原爆投下について米国政府に賠償命令を出すことはできるのか?といったのと同様の問題です。これは、現在の国際法の原則としてはできません。
現在の国際法だと、他国の政府を人道に反した罪で告訴する場合は、国連の下にある国際刑事裁判所に告訴するのが原則です。しかしながら、本件は、国連が創設される前の戦前の事例であり、人道に反した罪(民族浄化などの虐殺等)として告訴して有罪判決を得られる可能性は低いと考えられます。
国際法的には、強制力のある判決が出せる訴訟ではありませんが、韓国国内の政治力学が大きく作用していると考えられます。そもそも、本報道には一定の「~しそうだ」という予測と、外務省幹部というソースに言及があるため、記者の署名記事とすべきと思われます。似たような書き方は他社メディアでも散見されます。各メディアとも、純粋な事実関係だけを書くストレートニュース以外は原則、記者の署名記事とすべきと思います。
政治的な意図があるとした場合、現代韓国において、どの程度票になるのか、あるいは、あるほかのイシューから国民の目をそらすための効果があるのでしょうか。
また、慰安婦問題についての日本政府の施策は外務省HPにまとまっています。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/taisen/ianfu.html
また、歴史問題全般はこちら。各国の主張の是非はあるとしても、75年以上経っても、日本がそのくびきのなかにいることは確か。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/a_o/rp/page23_000874.html
なお、峽洋一郎さん、プロピッカーの塩崎さんのコメント、大変興味深く拝見しました。文政権には、日韓関係を修復する意思も能力もないのでしょうか。司法は別とはいえ、こんな真正面からケンカを売るような事態は誰のためにもならないと思います。日本も菅政権がコロナ対策の失敗で支持率を急落させています。強い政権しかこの問題は解決できません。まるで出口が見えません。東アジアに関心の強いバイデン政権の仲介に期待するしかないです。