サムスン、新型液晶TV発表 色調改善も進化は限定的
【ソウル=細川幸太郎】韓国サムスン電子は7日、色鮮やかな映像を楽しめる新型液晶テレビを発表した。バックライトの微細な発光ダイオード(LED)の輝度を細かく調整することで色の変化を鮮やかに表現できるという。急速にコモディティー(汎用品)化が進んだ液晶テレビは進化の余地が限られており、ハード面での技術革新は年々難しくなっている。
11日に開幕する米家電見本市コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)の事前イベントをオンラインで開いた。新技術のブランドは「NeoQLED(ネオ・キューエルイーディー)」。バックライトに使うLED素子を従来比40分の1に小型化し、より細かな色調調整が可能という。今春の発売予定としながら画面サイズや価格帯などは明らかにしなかった。
登壇したテレビ部門トップの韓宗熙(ハン・ジョンヒ)事業部長は「より多様なユーザーのライフスタイルを反映し、『すべての人のスクリーン』を目指す」と語った。字幕や手話の部分を人工知能(AI)が認識して大きく表示するといった機能を備えたという。在宅勤務の増加を受けてパソコンとの接続機能を拡充。画面を4分割してテレビやPC、ゲーム画面などを同時表示できる。
製品紹介ではソフトウエアの機能拡充が大半を占めた。それはハードウエアとしてテレビの進化の余地が狭まっていることの裏返しでもある。基幹部品の液晶パネルでは中国勢が一定品質のパネルを大増産しており、製品力の違いを簡単には打ち出せなくなっているのが現状だ。
「液晶の次」として期待されてきた有機ELパネルもテレビ向けではLGディスプレーのみが量産しており、1社独占と巨額の投資負担の影響でパネル価格が下がっていない。実際に2020年時点でテレビ市場に占める割合は3%程度にとどまり、液晶優位は揺らいでいない。サムスンは液晶の改良版を模索するものの、販売テコ入れにつながるかは見通しにくい。
サムスンは7日の発表の中で有機ELについて、発光素子が光りにくくなる「焼き付き」が起こると、競合製品のネガティブキャンペーンまで展開した。かつては家電の主役としてCESの目玉だったテレビだが、ハード面での技術革新の停滞が顕著になってきている。
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