2021/1/9

働く場所を選べる時代の「賃貸オフィス改革」最前線

「仮想オフィス」も出現

コロナで賃貸オフィスが死ぬことはない。むしろ、オフィスビジネスはこれまで以上にダイナミックになるとみられている。リモートワークが可能になっても、都市部やオフィスを離れる人は少数派。だがリモートワークは新たな場所での新たな暮らし方を可能にするから、オフィス業界では相応の混乱が起きるだろう。
経済成長の推進力となる「クリエイティブ・クラス」が集ういくつかの大都市では、コロナ禍の前からオフィス市場に落ち込みの兆しがあった。
2018年、アメリカ経済は2.9%の健全な成長を見せたが、ニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコへの純移動率はマイナスだった。同じくクリエイティブな人材を引きつけるロンドンやパリでも、純移動率は下降した。
これらの都市から住人が減少しているのは、厳しい建築規制で住居が不足し、住居費が高騰したのが主な原因だが、オフィス市場を揺るがす要因はそれだけではない。
2010年代半ばにGAFAをはじめとする企業は、拠点の分散に着手した。さらに一歩踏み込んだのが、現在世界で最も価値が高いスタートアップの1つであるオンライン決済のストライプだ。
2019年にストライプは、拠点であるサンフランシスコ、シアトル、ダブリン、シンガポールの「中心部以外に住む99.74%の優秀なエンジニアを採用する」ためにリモートハブ、つまりはバーチャルオフィスを開設した。
都市部ではオフィスが住宅に、郊外では住宅がオフィスになる「入れ替え」現象が起きつつある(Karsten Moran/The New York Times)