五箇公一さん「社会のすきまにウイルス」 利他性の後退に警鐘
新興感染症と生態系の破壊には深い関係があるとされる。生物多様性の専門家で国立環境研究所の五箇公一さんは、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は自然界からの警告だと警鐘を鳴らす。【聞き手・稲垣衆史】
--生物多様性を損なうことはなぜ人間にとって危険なのでしょうか。
◆生物多様性は目に見えるわけではなく、水や空気と同じように存在して当たり前のものだ。多様な生き物が作る生態系のネットワークが空気や水を育み、温度もある程度一定に保つなど地球環境を安定させている。それを支えているのが遺伝子や種の多様性だ。生物多様性が損なわれ生態系の機能がまひすると、地球は人間にとって極めて住みにくくなっていく。一方、生物多様性は複雑なメカニズムで、それを正確に把握して評価することは難しい。この地球上に生息する種の数すら分かっていない。そのため、どのくらいの種が絶滅すれば生物多様性が危機的状況となるかについても、正確に予測することができない。ただ、地球温暖化を含めた異常気象や新興感染症の発生も生物多様性の劣化と連鎖しており、生物多様性の実態を我々が把握できるようになるまでは、現状を維持する以外にリスク回避の手はない。
グローバル化で拡大
--地球規模での新興感染症が増えるのはなぜでしょう。
◆歴史的に、常に新しい感染症が人間社会を襲い続けてきたが、かつてはローカルな問題に終始していた。世界史上、初めての世界規模でのパンデミックはペストだとされる。モンゴル帝国の領土拡大に伴って、その病原体が全世界に広がったと考えられている。HIV(エイズウイルス)やエボラ出血熱などが急速に世界に広がるようになったのは、明らかに1960~70年代以降に世界経済が急成長してからだ。すなわち化石燃料を利用し、経済がグローバル化してから深刻になっている。
経済発展で伐採や密猟のためにジャングルに人間が入り、人と動物の距…
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