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会社がコロナ倒産、月12万円の住宅ローンが返済できない40代の困窮

 コロナ失業や収入減により、ローンの支払いに困窮する人がかつてないほど増えている。マイホームの差し押さえに自己破産……。ローン返済が滞れば、これまでの日常は瞬く間に崩れ去る。新型コロナによって顕在化した「ローン破綻の落とし穴」はどこか? コロナ禍で返済に追われる人たちの姿を追った。
[ローン破綻]の現実

不動産会社で相談窓口を開設した岡崎清春氏(左)。西尾明善さん(仮名・45歳)が窮状を語った

冬のボーナスカットで住宅ローン返済困窮者が急増か

「すでに貯金は底を突き、住宅ローンを3か月滞納中です。ついに金融機関から『全額返済しないと、自宅を差し押さえる』と最後通告を突きつけられてしまいました」  8月、埼玉県蕨市の不動産店の窓口を訪れた西尾明善さん(仮名・45歳・既婚)が取材に応じてくれた。 「10年前に結婚したタイミングで、4400万円の戸建てを埼玉で購入。頭金600万円を払い、残り3800万円を35年ローンで借り、毎月12万円を返済していました。手取りは残業代などを含めて33万円ほど。子供がらみの出費などで支払いが厳しい月もありましたが、今まで一度も延滞することなくなんとか返済し続けてきました」  状況が一変したのは、新型コロナウイルスが流行し始めた4月。原則テレワークとなったことで残業代が出なくなり、月収は23万円にまで激減。それでもなんとか返済を続けていたが、海外輸出が生命線の西尾さんが勤務する会社は6月、コロナ倒産してしまう。
[ローン破綻]の現実

手には督促状が。「売るしかないけれど、借金だけ残るうえに住む場所がない。家族がバラバラになるのだけは避けたい……」(西尾さん)

「失業保険は受給できたものの、それだけじゃローンは返済できない。すぐに次の仕事を探し始めましたが、何十社受けても再就職先が決まりません。このまま競売にかけられても、ローンの残額には到底及ばず借金が残るだけ。どうしたらいいのか……」 ▼西尾明善さんのローン詳細 年収600万円(製造業)→0円 ローン残債 2300万円 月の返済 12万円

ローン利用者の4割超が「返済が苦しい」事態に

 今、西尾さんのようにコロナの影響による失職・収入減で住宅ローン破綻に陥る人が急増している。西尾さんが窮状を語った不動産会社「リアルティ・オカザキ」が8月から無料相談窓口「住宅ローン救済コロナSOS」を開設したところ、ローン返済に苦慮する人々からの相談が多数寄せられている。 「『なんとか家を維持したい』といった要望から、競売の阻止、金融機関との交渉まで。相談内容はさまざまですが、コロナで失職・収入減を余儀なくされた人たちが窮状を誰にも打ち明けられずにウチへと駆け込むケースが少なくない。これまでの経緯や家計の状況など、時間をかけてヒアリングしながら解決策を提案しています」(同社専務取締役・岡崎清春氏)  また「フラット35」を手がける住宅金融支援機構にも、ローン返済の一時猶予や見直しを求める相談が殺到。返済猶予が承認された件数は5月時点で2265件。コロナ以前の2月と比べると151倍になっている。
[ローン破綻]の現実

住宅金融支援機構には、4月以降返済猶予を求める相談件数が急増。5月には返済方法変更の承認件数が2月の151倍にまで増加した。 出典:住宅金融支援機構の記者発表資料より抜粋

 今回、編集部でもローン返済者2000人にアンケートを実施したところ、「コロナ流行以降、返済が苦しくなった」と回答した人は44.8%にも上った。その理由の多くがコロナによる収入減や失職・休職だったことからも、破綻リスクが現実のものになっていることがわかる。
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2000人アンケート結果
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