2021/2/15

【干場弓子】無理なく楽しく働ける条件は「自分で決められるか」

ディスカヴァー・トゥエンティワン 共同創業者
取次を通さない「直取引」と独自の企画開発力で異彩を放つ出版社、ディスカヴァー・トゥエンティワン。創業社長として35年、成長を率いた干場弓子さんは、勝間和代さんなど時代を象徴するキーパーソンを発掘した功績でも知られる。

近年は、日本の出版コンテンツの世界展開にも尽力してきた。華やかで屈託のない笑顔の裏には、いくつものピンチを乗り越えた歴史がある。

社長を退任して1年。「楽しくなければ、仕事じゃない」と言い切る干場さんが指針にする哲学、そしてこれから描くセカンドキャリアとは。(全7回)
ディスカヴァー・トゥエンティワン 共同創業者、元社長、一般社団法人 日本書籍出版協会理事

愛知県立旭丘高等学校、お茶の水女子大学文教育学部卒業。世界文化社『家庭画報』編集部等を経て1985年、ディスカヴァー・トゥエンティワン設立に参画。以来、社長として経営全般に携わり、書店との直取引で業界随一の出版社に育て上げた。2011年には『超訳 ニーチェの言葉』が同社初の100万部を突破。自ら編集者としても勝間和代氏のほか、多くのビジネス系著者を発掘。グローバル展開にも積極的に取り組み、日本書籍出版協会国際委員会副委員長として、フランクフルト、ロンドンなどの国際ブックフェアへの出展を他の出版社にも働きかけ、世界の出版界における日本コンテンツのプレゼンスの向上に努める。著書『楽しくなければ仕事じゃない』

新しい幸福の価値基準

社長を辞めるタイミングは最初から伊藤さんとの約束で65歳に決めていたのですが、正直に言うと、その数年前まで、まだ果たしていない使命があることに焦っていました。
21世紀の新しい幸福の価値基準の選択肢を示す、などと言いながら、示しきれていないではないかと。
「ああ、やってくれる人がいるんだったらもういいかな」と思えたのは、他社の『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』(佐藤航陽 著)を見たときです。
今の資本主義を否定するのではなく、お金に関する多様な価値基準を提案することによって、今の資本主義における価値観を相対化する。それがその本の主張でした。