2021/2/11

【干場弓子】何のために仕事をするのか。私が見つけた働く理由

ディスカヴァー・トゥエンティワン 共同創業者
取次を通さない「直取引」と独自の企画開発力で異彩を放つ出版社、ディスカヴァー・トゥエンティワン。創業社長として35年、成長を率いた干場弓子さんは、勝間和代さんなど時代を象徴するキーパーソンを発掘した功績でも知られる。

近年は、日本の出版コンテンツの世界展開にも尽力してきた。華やかで屈託のない笑顔の裏には、いくつものピンチを乗り越えた歴史がある。

社長を退任して1年。「楽しくなければ、仕事じゃない」と言い切る干場さんが指針にする哲学、そしてこれから描くセカンドキャリアとは。(全7回)

ハードワークに限界を感じて

大学卒業後に入社した世界文化社では、憧れの『家庭画報』編集部、それも志望のファッション班に配属。
着道楽だった両親の下に育った私は、ブランドの名品コレクションや、最新のファッショントレンドに触れられる日々が楽しく、今のファッション好きの土壌となってしまいました!
一方で、雑誌編集という華やかなイメージを裏切る過酷なハードワークには、「ここで長くは働けないかも」という限界も感じていました。
企画、スタッフ調整、ロケハン、スタイリング、撮影、デザイン入れ、原稿執筆、ゲラ回し、その他の新人が担う雑用……。
月の残業時間が200時間近くになるときもザラでした(もちろん今では改善されているはずですが、当時はそんな時代でした)。
ディスカヴァー・トゥエンティワン 共同創業者、元社長、一般社団法人 日本書籍出版協会理事

愛知県立旭丘高等学校、お茶の水女子大学文教育学部卒業。世界文化社『家庭画報』編集部等を経て1985年、ディスカヴァー・トゥエンティワン設立に参画。以来、社長として経営全般に携わり、書店との直取引で業界随一の出版社に育て上げた。2011年には『超訳 ニーチェの言葉』が同社初の100万部を突破。自ら編集者としても勝間和代氏のほか、多くのビジネス系著者を発掘。グローバル展開にも積極的に取り組み、日本書籍出版協会国際委員会副委員長として、フランクフルト、ロンドンなどの国際ブックフェアへの出展を他の出版社にも働きかけ、世界の出版界における日本コンテンツのプレゼンスの向上に努める。著書『楽しくなければ仕事じゃない』
結婚を機に、夫の赴任先のアメリカに渡り、帰国後は家庭画報の先輩が編集長を務める女性向けのライフスタイル誌を発行する小さな雑誌社に転職。
インテリアや美容、手芸、ファッションと、好きな分野を担当させてもらい、大いに勉強になりました。
それでも、「私は今、何のために仕事をしているんだろう?」とモチベーションを失いかけていた時期もありました。
「こんな仕事、誰の役に立っているんだろう。もっと世の中の役に立つ仕事をしたい。そうだ、大学で法律を学び直して弁護士になろう」、そんなことまで考えていたこともありました。