2021/2/10

【干場弓子】イノベーションは、個人の中の多様性から生まれる

ディスカヴァー・トゥエンティワン 共同創業者
取次を通さない「直取引」と独自の企画開発力で異彩を放つ出版社、ディスカヴァー・トゥエンティワン。創業社長として35年、成長を率いた干場弓子さんは、勝間和代さんなど時代を象徴するキーパーソンを発掘した功績でも知られる。

近年は、日本の出版コンテンツの世界展開にも尽力してきた。華やかで屈託のない笑顔の裏には、いくつものピンチを乗り越えた歴史がある。

社長を退任して1年。「楽しくなければ、仕事じゃない」と言い切る干場さんが指針にする哲学、そしてこれから描くセカンドキャリアとは。(全7回)
ディスカヴァー・トゥエンティワン 共同創業者、元社長、一般社団法人 日本書籍出版協会理事

愛知県立旭丘高等学校、お茶の水女子大学文教育学部卒業。世界文化社『家庭画報』編集部等を経て1985年、ディスカヴァー・トゥエンティワン設立に参画。以来、社長として経営全般に携わり、書店との直取引で業界随一の出版社に育て上げた。2011年には『超訳 ニーチェの言葉』が同社初の100万部を突破。自ら編集者としても勝間和代氏のほか、多くのビジネス系著者を発掘。グローバル展開にも積極的に取り組み、日本書籍出版協会国際委員会副委員長として、フランクフルト、ロンドンなどの国際ブックフェアへの出展を他の出版社にも働きかけ、世界の出版界における日本コンテンツのプレゼンスの向上に努める。著書『楽しくなければ仕事じゃない』

教育熱心だった両親

はじめに告白すると、私はもともと編集者を目指していたわけではありませんでした。目指していたのは、自立した人生。
編集者は、結果として、その手段となりました。
生まれ育った家庭は、父は公務員、母は専業主婦、妹が一人。核家族の走りで、両親は教育熱心だったと思います。
生まれは静岡でしたが、父が国税庁勤務になり東京への転勤が決まると、私を“お受験”させて宿舎に近い日本大学附属幼稚園に入れました。
早生まれの私は受験では不利だったはずですが、試験官の先生から「青と赤、答えはどっちかな?」と尋ねられると、「先生はどっちだと思う?」と聞き返すような知恵が働いたようで、なんとか合格。若い公務員の薄給の3分の1を幼稚園の費用にあてていたそうです。
あの頃は娯楽が少なかったからだと思いますが、本はよく読んでいました。親から買ってもらった全集シリーズに読み耽り、小学校の図書室にあった本は読破していました。