JR・旭川駅(写真AC)

 連載「実録・新型コロナウイルス集中治療の現場から」の第32回。現在感染拡大がまだ広がっていない地方も、ひとたび病院でクラスターが発生すれば医療は危機に陥る──讃井將満医師(自治医科大学附属さいたま医療センター副センター長)はこう警鐘を鳴らす。讃井教授が示す、旭川の教訓に学ぶ処方箋とは?

「新型コロナウイルスの感染拡大はとどまることを知らず、このままでは、新型コロナウイルス感染症のみならず、国民が通常の医療を受けられなくなり、全国で必要なすべての医療提供が立ち行かなくなります。」――12月21日、日本医師会や日本病院会など9団体が、『医療緊急事態宣言』を出しました。

『医療緊急事態宣言』より

 とくに東京の感染拡大は深刻で、医療逼迫が限界に達しています。しかし、じつはまだそれほど感染が拡大していない地方でも、危険なことに変わりはありません。地方では、黄信号をとばしていきなり赤信号が点灯するかもしれないからです。

平時から医療負担が大きい地方の中核都市

 日本の地方医療の特徴は、中核都市に比較的規模の大きな基幹病院があり、そこに専門医が集中しており、比較的広い範囲の地域をカバーしていることです。新型コロナ感染症でも、基幹病院が中心となって診療にあたりますが、集中治療室をはじめとする新型コロナ感染症用の病床数には限りがあります。ただでさえ、新型コロナ感染症の感染拡大に対して地方は脆弱なのです。