2021/2/5

【石坂 茂】婚活ビジネスの社会的意義が認められ、上場を果たす

株式会社IBJ 代表
地域に点在する結婚相談所・仲人さんを組織化した「日本結婚相談所連盟」を設立し、ITとリアルを融合させた婚活事業を推進してきたIBJ。同社は婚活業界で初めて東証一部上場を果たし、業界第1位の会員数・成婚者数を誇る。

創業社長の石坂茂氏は日本興業銀行の出身で、「婚活」という言葉が存在しなかった2000年に日本初となる結婚相手のマッチングサイトを開設した。

金融業界から一転して新規事業を立ち上げ、婚活からライフデザイン領域にまでサービスを拡充している石坂氏に、独自のビジネスモデルや成婚メソッド、経営哲学を聞いた。(全7回)

社名を「IBJ」とした理由

Yahoo! Japanから再独立したあと、それまでのブライダルネットとは別に、IBJを設立。同時に、全国の結婚相談所をネットワーク化する「日本結婚相談所連盟」を立ち上げました。
IBJ設立当時
「IBJ」という社名は、私が新卒で入行した日本興業銀行(The Industrial Bank of Japan=IBJ)の略称として知られています。そのIBJを社名としたのには、2つの理由があります。
1つはやはり、事業をやるからには、かつての興銀のように天下国家に影響を与えて、社会のために尽くしたいという意志からです。IBJを冠することで、その気持ちを常に忘れずに律したいと思い、拝借しました。
もう1つの理由は、全国の結婚相談所をIT化して再編するにあたり、仲人さんたちが親しみやすい名称を使って浸透させる狙いがありました。
アナログで相談所を営んできた仲人さんたちに、「ITを活用したシステムを導入してもらって、結婚相談所のプラットフォームをつくりたいんです」と言っても、受け入れてもらうのは難しい。
そこでまずはカタチから、アルファベット3文字の名称で抵抗感をやわらげようと考えました。というのも、仲人さんを束ねる組織では、アルファベット3文字の通称を使うのが主流だったからです。
当時の仲人さんの間では、NNR(日本仲人連盟)、JBA(日本結婚相談協会)、BIU(日本ブライダル連盟)といった組織が知られていました。そこから私は「IBJ」に、「IT Bridal network of Japan」をあてたのです。
2006年にIBJを設立した当初は、IBJの加盟店を増やし組織化していくために、各地のキーパーソンとなる仲人さんを訪ねては、IT化のメリットや、これまでの仲人さんたちのようなサポートを融合する意義、「一組でも多くの結婚カップルを増やしたい」という私の思いを伝えていきました。
その時には「IBJ」という社名がやはり、関心の糸口になってくれました。「IBJのIは石坂のIじゃなくて、ITのIなんですよ」などと冗談交じりに話していくと、「IBJ? また似たような名前だね」と言われながらも覚えてもらい、浸透していきました。

システムと集客メディアで訴求

IBJでは、結婚相談所がこれまで紙で管理していた会員さんのプロフィールをデータベース化。パソコンやスマートフォンからいつでもどこでも、お相手を検索して、お見合いを申し込めるシステムを構築しました。
IBJに加盟すると、この基幹システムを利用して相談所の業務を効率化することができ、加盟店のネットワークを生かしたお相手の紹介が可能になります。
また、設立当初は、仲人さんたちは集客に困っていたため、集客のためのメディアサイトも制作しました。
このメディアサイトには無料で広告が掲載でき、入会した場合に1万円をいただく。ただ、メディアに掲載するには、IBJのシステムも導入してください。そんなふうに勧誘していったんですね。
仲人さんたちの大半は、インターネットで情報発信する以前に、パソコンすら使ったことがない。でも、メディアサイトで集客できることは魅力的なわけです。
ですから最初は、集客ができることをアピールしてシステムを使ってもらい、パソコン教室を開いて基本的な操作の仕方から説明していきました。
(写真:kohei_hara/iStock)
当時の仲人さんは女性が主力で、50〜60代が中心。なかには80代の方もいましたが、皆さんとても意欲的でした。
ひとたびシステムの導入が集客や会員さんのメリットにもつながることがわかると、熱心に取り組んでくださるんです。
不動産業を営む実家でも、パソコンが普及してきた当時、父は「パソコンなんか絶対やらない、一生使わないで棺桶に入る」と言っていましたが、母は必要に迫られて使えるようになっていました。
ですので、仲人さんたちも、丁寧に説明して合理性を理解してもらえれば、必ずパソコンやインターネットを使いこなせるようになるという確信がありました。
石坂 茂(いしざか・しげる)/IBJ 社長
1971年生まれ。95年東京大学経済学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。2000年ブライダルネット社長に就任。2006年IBJを設立し社長に就任。日本最大級の結婚相談所ネットワーク「日本結婚相談所連盟」をはじめとする婚活事業を基軸に、ウエディング、ハネムーン、保険、不動産などに事業を展開。人生をトータルにサポートする「ライフデザインサポートカンパニー」として成長させている。
パソコンの操作から説明するのは手間のかかることではありますが、私は楽しんでやっていました。