2020/12/31
【鬼木達】「勝つチームの空気は説明しづらい。だから…」
チームのあり方が変わり始めた。
デジタルツールの発展やライフサイクルに合わせた柔軟性に対応するため、これまで毎日のように顔を合わせ、言葉をかわし、作り上げられてきたそれは「外形的」に新たなモノになりつつある。
この変化の中で大事なことの一つに、もともとチームが持っていた「内面的」なものをどう維持し、成長させていくかということがある。
では、そもそも強いチームが持っていた「内面性」とはどんなものだったのか。今年、圧倒的な結果を残したチームにそのヒントがある。
Jリーグを制覇した川崎フロンターレだ。GMである庄子春男に続く今回は、監督・鬼木達(おにき・とおる)の言葉。
「雰囲気を作る」のは監督の仕事
日本サッカー界で今、最も勝っている監督が川崎フロンターレの鬼木だ。
2017シーズンから指揮を執り、4シーズンで実に3度のリーグ制覇と1度のカップ戦優勝。今シーズンに限って言えば、Jリーグ史上最強と言えるほどの圧倒的な成績を収めている。
中村憲剛らスター選手が揃うチームの中で、表舞台では多くを語らない鬼木はチームマネジメントとリーダーの役割をどう考えているのか。
──「雰囲気」はこれから非常に重要なテーマになると思っています。例えば、リモートワークなど働き方が多様化し、チームが一つの場所にいることは当たり前ではなくなりました。その中で表現しづらくなったと感じるものがあります。その一つが、チームの雰囲気です。
鬼木監督は、現役時代の鹿島アントラーズ、そして現在の川崎フロンターレと日本サッカー界の「常勝軍団」を知っていらっしゃいます。「常勝軍団」の雰囲気とはどういうものでしょうか。
鬼木 いきなり難しいですね(笑)。・・・正直なところ僕自身が特別な何かをしているとは思いません。ただ、 おっしゃる雰囲気をサッカーの話で言えば「クラブの持っているもの」を生かすしかないと思っています。
──持っているものを生かす。
鬼木 アントラーズとフロンターレは違うクラブですから、アントラーズの正解をフロンターレに持ち込んでも成功はしないと思いますし、フロンターレが──今、成功しているとするならですが──取り組んでいることと同じことを他のクラブがやったからといって勝てるものではない。
つまりそのクラブの「色」を、最大限に生かせる方法を探るべきなんだろう、ということです。
──強いチームにはこういうものが必ずある、ということではない。
鬼木 「勝っているときの空気」って言い表すことが本当に難しいんです。
2017シーズン、初めてリーグ優勝をしたとき、(川崎フロンターレは、長年あと一歩のところで優勝に届かない「無冠のクラブ」でシルバーコレクターと言われていた)選手たちに言ったことがあります。
「勝つときの空気というのはなかなか言葉で説明しづらい。だからこの空気を覚えておいて欲しい。それがわかっていれば、この先『そういう空気じゃない』ときに気づける」
そのくらい難しいと思っています。
──フロンターレは一度「勝つ雰囲気・空気」を知ったことで基準ができた。
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