[東京 24日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は24日、経団連の審議員会で講演し、18日の金融政策決定会合で決めた金融政策の点検について、2%の物価目標に向けて「より効果的で持続的な金融緩和を続けていく上で、さらなる工夫があるなら実施したい」と述べた。現在の長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)付き量的・質的金融緩和は「適切に機能してきており、枠組みを見直す必要はない」と強調した。

点検に当たってのキーワードは「効果的」と「持続的」だとした。YCCの運営の仕方や各種の資産買い入れなどの施策について、所期の効果を発揮しているか点検する。

黒田総裁は「低金利の継続によって金融機関の収益には負の影響があるし、長期国債やETF(上場投資信託)などの各種の資産買い入れは市場機能に影響する」と指摘。金融政策のコストや副作用を「できるだけ抑える必要がある」と述べた。

しかし「コスト・副作用を抑えることが、点検の重点ではない」と言明。「副作用を抑えながら、より効果的に金融緩和を実施し、目標である経済と物価の安定を実現するにはどうしたらよいか、というフォワードルッキングな方向で点検していきたい」と述べた。

<ポストコロナも見据えて>

黒田総裁は、大きなショックの後に低成長が長引く理由として、1)ショック時の失業増加などが回復期の労働投入にも影響を及ぼす「履歴効果」、2)設備投資の抑制による「資本投入の停滞」、3)「技術進歩の停滞」──の3要因に整理されることが多いと指摘。新型コロナウイルス感染症の影響が収束した後にしっかりとした成長経路に復していくため、こうした問題に対処することが大事だと述べた。

また、高水準の貯蓄が今回のショックの影響を和らげた面もあるものの、過度に投資に慎重になると将来、競争力の差となって表れると指摘し、コロナ以前にみられたような「未来に向けた投資」を積極的に行う姿勢が重要と述べた。

その上で、現在の厳しい経済環境の下でも、企業や国のさまざまなレベルで一段とデジタル化を推進しようとする動きが進んでいることは「注目すべき兆候」と評価。企業が成長投資を通じてイノベーションを産み出していく姿勢を維持しているのは心強いと述べた。

経済の変化をチャンスにつなげることができれば、コロナ終息後も経済は停滞せず飛躍することができるとし、日銀として「緩和的な金融環境を提供することで、変革に向けた動きを強力にサポートしていきたい」と語った。

*内容を追加します。

(和田崇彦、杉山健太郎 編集:山川薫、田中志保)