先進安全自動車「ASV」のADAS技術、徹底まとめ!自動運転につながる重要技術

国土交通省、理解促進へ資料を公表



安全運転を支援するため先進技術システムを搭載した先進安全自動車「ASV」(Advanced Saftey Vehicle)。そこで搭載されているADAS(先進運転支援システム)技術はいずれも、将来の自動運転技術につながる重要な技術であると言える。


そんなASV技術について国土交通省は2020年12月23日までに、それぞれの技術の概要をまとめ、資料として公表した。この記事ではその中から主要な技術を取り上げ、紹介していこうと思う。

▼主要なASV技術の概要
https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/01asv/resourse/data/asvtechnology.pdf

記事の目次

■乗用車のASV技術
出典:国土交通省
AFS(配光可変型前照灯)

夜間走行時、カーブや交差点などで進行方向の視認性を向上するため、走行状況やハンドル角、方向指示器などの運転操作に応じ、前照灯の配光や照射範囲を自動的に制御する機能だ。

ふらつき警報(ふらつき注意喚起装置)

運転者の居眠りや疲労などによる事故を防止するため、低覚醒状態に起因する挙動を検知し、運転者に注意喚起する機能だ。


車間距離警報(車間距離警報装置)

前方車両への追突事故の防止のため、前方の車両との車間距離を検知し、そのまま走行した際に衝突の可能性が高いと判断された場合に、運転者に衝突を回避するよう警報する。

車線逸脱警報(車線逸脱警報装置)

走行車線からの逸脱を防止するため、走行車線を認識し、車線から逸脱した場合、あるいは逸脱しそうになった場合には、車線中央にハンドルを戻すよう警報する機能だ。

衝突被害軽減ブレーキ(前方障害物衝突被害軽減制動制御装置)

前方の障害物への衝突防止と、衝突時の被害を軽減するため、前方の障害物との距離と相対速度を検知し、そのまま走行すれば衝突の可能性が高いと判断した場合には運転者に衝突を回避するよう警報する。衝突が避けられないと判断した場合には自動的に制動装置を制御する。

全車速ACC(全車速域定速走行・車間距離制御装置)

全車速域において一定速度で走行する機能、および車間距離を制御する機能を持った装置だ。


レーン・キープ・アシスト(車線維持支援制御装置)

走行車線を認識し、走行車線の中央付近を維持するよう操作力を制御する。車線から逸脱しそうになった場合には、運転者が車線中央に戻す操作をするよう警告する。

パーキング・アシスト(後退時駐車支援制御装置)

後退駐車時、運転者が設定した目標駐車位置付近へハンドルを自動制御して後退駐車を補助する。

急ブレーキ連動シートベルト(緊急制動時シートベルト巻き取り制御装置)

衝突の際、乗員の拘束性能を高めて乗員被害を軽減するため、ブレーキの踏み込み速度などから、緊急制動と判断した場合にはシートベルトを巻き取る機能。

リアビークル・モニタリング・システム(後側方接近車両注意喚起装置)

車線変更時の後側方車両との衝突を防止するため、後側方車両を検知して情報提供を行う機能で、運転者が車両接近方向へ方向指示器を操作した場合には注意喚起を行う。

エマージェンシー・ストップ・シグナル(緊急制動表示装置)

高速走行時に急ブレーキをした際、ストップランプまたはハザードランプを高速点滅させて、後続車両への注意を喚起する。

低速域衝突被害軽減ブレーキ(低速度域前方障害物衝突被害軽減制動制御装置)

低速走行時における先行車などの前方障害物への衝突防止、また衝突時の被害を軽減するため、低速走行時に先行車などの前方障害物を検知し、衝突の危険性が高いと判断した場合に自動的に制動装置を制御する。

ペダル踏み間違い時加速抑制装置

間違ってアクセルを踏み込んだ際、障害物への衝突が予測される場合に、エンジンの出力制御やブレーキ制御などによって急発進・急加速を抑制する機能だ。

アダプティブ・ハイビーム・システム(自動防眩型前照灯)

前方の先行車、対向車、対向自転車を検知し、眩しさを与えないようヘッドライトの照射範囲を可変制御して部分遮光することにより、ハイビーム同等の視界を確保する機能だ。

リアクロストラフィック・アラート(後退時接近移動体注意喚起・警報装置)

後退時に左右方向から接近してくる車両などを検知し、運転者に注意喚起もしくは警報を出す機能だ。

リアクロストラフィック・オートブレーキ(後退時接近移動体衝突被害軽減制動制御装置)

後退時に左右方向から接近してくる車両などを検知し、衝突の危険性がある場合は、衝突
回避または被害軽減のために、自動的にブレーキを制御する機能だ。

ブレーキ付周辺ソナー(低速度域車両周辺障害物衝突被害軽減制動制御装置)

駐車時や渋滞時などの低速走行時に車両周辺の障害物を検知して、衝突の危険性がある場合は、衝突回避または被害軽減のために制動制御する。

後退時衝突被害軽減ブレーキ(後方障害物衝突被害軽減制動制御装置)

後退時に、後方の障害物への衝突防止あるいは被害軽減のために、自動的に制動ブレーキを制御する。

路外逸脱抑制機能(路外逸脱抑制装置)

クルマが車線をはみ出しそうになるのを防ぎ、車線内へ戻す、またはそれ以上逸脱させないように支援する機能だ。

エマージェンシー・ドライビング・ストップ・システム(ドライバー異常時対応システム)

運転者の体調の急変により、運転の継続が困難になった場合など、運転者の異常を検知し、事故の回避や被害軽減を図るため、車外に報知するとともに自動的に減速、停車制御し、運転者に代わって車両を停止させる。

衝突被害軽減ステア(前方障害物被害軽減操舵制御装置)

前方の障害物への衝突防止と衝突時の被害軽減のため、障害物との距離や相対速度、横位置を検知し、そのまま走行してブレーキ制御だけでは衝突が避けられないと判断した場合、操舵装置を制御する機能だ。

レーン・チェンジ・アシスト(車線変更支援制御装置)

車線変更時、操舵制御して車線変更を補助する装置で、運転者の車線変更意志により隣接車線へ移動するためのハンドル操作を制御する機能だ。

通信利用型運転支援システムV2X(信号情報活用運転支援機能装置)

信号ジレンマにおける運転者の急激な加減速を未然に防止するため、通信で取得した情報と自車の情報を車載機で処理し、次に通過予定の信号情報を画面に表示する装置だ。

先行車発進お知らせ機能(先行車発進注意喚起装置)

後続車からの追突を防止するため、先行車が発進した後に自分の車が一定時間停止し続けた場合、運転者に先行車が発進したことを情報提供する。

交通標識認識システム・標識認識機能(道路標識注意喚起装置)

道路標識の見落としによる事故を防止するため、走行中にカメラ等などで道路標識を検知、その情報を運転者に提供する。また、制限速度の超過なども運転者に注意喚起する。

フロントクロストラフィックアラート(前側方交差接近移動体注意喚起・警報装置)

前進時に左右方向から接近してくる車両などを検知し、運転者に注意喚起もしくは警報する。

運転者監視システム

運転者の顔などを認識し、わき見や居眠りなどの危険運転を防止する機能で、過労運転または前方不注意に対して注意喚起を行うためのものだ。走行中、一定時間以上目を閉じていたり、顔の向きを前方から大きく外したりするなど、ドライバーに眠気や不注意があるとシステムが判断した場合、警報音や警告表示で注意喚起する。

■トラック・バスのASV技術
出典:国土交通省
後側方カメラ(後側方視界情報提供装置)

車両の後側方や側方の見えにくい領域の安全確認を補助するため、車両の後側方および側方の視界を撮影し、車室内の表示装置に画像を表示する機能だ。

ESC(車両横滑り時制動力・駆動力制御装置)

車両が横滑りしたときの横方向安定性の向上や、転覆の可能性を低減させるため、エンジン出力や制動力を制御する機能だ。

巻き込み警報(側方衝突警報装置)

左折巻き込み事故、左車線変更時の側方の衝突事故防止のため、側方の車両や自転車を検知して、車両の通過範囲を予測し、衝突の可能性が高いと判断した場合には運転者に衝突を回避するよう警報する機能だ。

統合型速度抑制装置(統合制御型可変式速度超過抑制装置)

重量車の速度超過の防止を支援するため、運転者が設定した速度以下にエンジン・リターダーなどの複数の機能を統合的に使用して統合制御する機能だ。

■【まとめ】最低限の知識は頭に入れておこう

自動運転業界にいる以上は、こうしたASVの技術についてはよく知っておきたいところだ。名称だけを知っているだけではなく、どういった機能かを理解していくことが重要だ。詳しい説明は以下のページから確認することが可能となっている。

▼主要なASV技術の概要
https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/01asv/resourse/data/asvtechnology.pdf

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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