[ワシントン 23日 ロイター] - 米政府は欧州の同盟諸国や民間企業に対して、ロシア産天然ガスをドイツへ直送する海底パイプライン「ノルドストリーム2」の建設作業に加わらないよう呼び掛けており、数週間以内に幅広い追加制裁を発動する態勢を整えている。複数のトランプ政権高官が23日明らかにした。

3人の高官は「非常に近い将来」に議会の指示に基づいたノルドストリーム2に対する新たな制裁を打ち出す準備をしていると説明。そのうちの1人は「われわれはこの案件でじわじわとボディーブローを与えてきたが、今やプロジェクトの心臓部を直撃する手続きを踏みつつある」と述べた。

ロシアは今月に入ってノルドストリーム2の建設を再開。既に全区間の90%を完成させた後、これまでの米国による制裁で作業は1年間中断していた。今回の工事はドイツの排他的経済水域(EEZ)内の浅海部分が中心で、100キロに及ぶ未完成区域の大半を占めるデンマーク沖の深海底はまだ手を付けていない。

米政府は、ノルドストリーム2が完成すれば、ロシア産天然ガスに対する依存が高まることで、欧州のエネルギー安全保障が脅かされると主張。ロシアは、米国が制裁を実施しているのは自国の液化天然ガス(LNG)業者の利益に配慮した行動だと反論し、完成を目指す構えを見せている。

こうした対立は、来年1月に米国で政権が交代しても続く可能性がある。米議会はノルドストリーム2反対で与野党の足並みがそろっている上に、バイデン次期大統領は2016年、このプロジェクトは欧州にとって「好ましくない取引」だと発言した経緯があるからだ。さらにバイデン氏は、最近の米政府機関への大規模なサイバー攻撃にロシアが関与した疑いがあることを巡り、同国を改めて批判している。