2021/1/19

【2030年】イーロン・マスクも注目する「教育の最前線」

2020年、新型コロナによる突然の休校措置やオンライン授業への対応に追われ、激変を迫られた教育現場。その一方で、今回のコロナの影響は、テクノロジーが現場に普及するための思わぬ追い風となったのかもしれない。

イーロン・マスクの20年来の盟友として知られるVC、ピーター・ディアマンディスが、氏の著書『2030年:すべてが「加速」する世界に備えよ』のなかで語る「教育の未来」からお届けする。
3つのポイント
①テクノロジーが「教師」となる
②「没入型」の教育環境を無限に生み出せる
③個人にカスタマイズされた教育を実現できる
(写真:マシュー・ラザフォード)

工業化時代の名残

現在の教育には大きく2つの問題がある。
1つめは、量の面での途方もない「人材不足」だ。2019年、アメリカでは160万人の教師が不足し、ユネスコの推計では、2030年に6900万人の教師が不足するという。
この教師不足の結果、現在世界で2億6300万人の子供たちが基本教育を受けられていない。
2つめは、質の面での「古い教育システム」だ。
18世紀半ば、アメリカでは鉄道の全国的普及に影響を受けながら、標準化された「製品」をつくるための工業的教育制度が広がった。生徒たちは始業ベルの音に迎えられ、教室から教室へと移動し、テストという名の品質管理によって、「従順な工場労働者」に育っているかを随時確認された。
1人の教師が教室いっぱいの生徒を教えるという画一的モデルは、すぐれた教師や学校が希少な資源だった時代に生まれた。たしかに効率的ではあるが、2種類のやる気のない生徒を生み出す。ついていけないグループと、退屈するグループだ。
(写真:xavierarnau/iStock)