2020/12/24

【2030年】「老化」はあと10年で克服できる

長年の友人イーロン・マスクと共に「Xプライズ」財団を立ち上げ、ビル・クリントン元大統領らが絶大な信頼を寄せるシリコンバレーのVC、ピーター・ディアマンディス。彼が情熱をそそぐ分野が、「健康寿命の延長」だ。本日刊行のディアマンディスの著書『2030年:すべてが「加速」する世界に備えよ』からお届けする。

ジョブズがあと30年生きていたら

何かを成し遂げる前に亡くなってしまう人が、どれだけいるのだろう?
アインシュタイン、あるいはスティーブ・ジョブズがあと30年健康に生きていられたら、どんな業績を残していただろう?
人生の後半、最も多くの知識を身につけ、スキルを磨き、有意義な人間関係を構築したところで、寿命が尽きて人生というゲームから退場させられるというのは、なんとも皮肉なことだ。
(写真:Waseef/iStock)

平均寿命は「100歳」を超える

この問題を解決しようという試みこそ、未来を加速させる推進力だ。つまり人間の健康寿命を延ばそうという試みである。
健康寿命を延ばすというのは、能力がピークに達し、社会に最も貢献ができる状態で活動できる年数を延ばすという意味だ。自らの夢をこれまでよりはるかに長い期間にわたって追い求めることができるようになる。
ではいったいどれだけ延ばせるのか?
20万年前、平均的な原始人は13歳ごろに結婚適齢期を迎え、まもなく子供をもうけていた。20代半ばにはすでに孫が生まれていた。
食料が希少で貴重だったことから、その場合子孫を残すために最良の選択は、孫から食べ物を奪わないことになる。このため進化の過程で、「(平均)寿命25歳」という安全装置が埋め込まれた。
(写真:gorodenkoff/iStock)
それから長らく、状況はほとんど変わらなかった。中世までに平均寿命はじわじわと延び、31歳になっていた。19世紀末には初めて40歳を超えた。
それが本格的に加速したのは20世紀に入ったころだ。
細菌論の発見から抗生物質の誕生、衛生状態の改善から清浄な水が広く入手可能になるといった要因によって、子供の死亡率が劇的に低下した。1900年にはアメリカの死者の30%が5歳未満の子供だった。それが1999年には1.4%まで低下した。
それと並行して農業技術の改良による「緑の革命」や輸送ネットワークの改善により、平均カロリー摂取量が増加し、寿命は再び延びた。最終的に2000年を迎えるころには平均寿命は30歳近く延び、76歳に達した。
(写真:master1305/iStock)
その後、2大死因である心臓病と癌の早期発見と治療の技術が進歩したことで、80代まで生きることも当たり前になった。
神経変性疾患の治療法が見つかれば、平均寿命は100歳を超えるという研究成果もある。
【教訓】人生100年時代は怖くない。「変身資産」の蓄え方
しかもそこでは止まらないという見方も多い。
その根拠は、本書のキーワードである「複数の先端テクノロジーの融合(コンバージェンス)」だ。
AI、クラウドコンピューティング、量子コンピューティング、センサー、膨大なデータセット、バイオテクノロジー、ナノテクノロジーが交錯するなかで、新たな医療ツールが続々と生まれている。そして多くの企業が、こうしたツールを活用して寿命延長をビジネスにしようとしている。

「Googleは死を出し抜こうとしている」