2020/12/23

マネーチェックリスト。年末年始にととのえたい「お金」の話

NewsPicks Brand Design chief editor
大人としてお金のことをきちんとしたいと思っていても、仕事が忙しいと後回しになりがちなのも事実。「いつかやる……」が口癖になって、結局手付かずという人も多いのではないだろうか。
そこで今回は、「ふるさと納税」「iDeCo」「つみたてNISA」などの代表的なマネーテクニックについて、ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんに聞いた。時間に余裕のある年末年始こそがはじめどきだ。できることから着実に実行していこう。
※初掲載は2020年12月23日。情報は2021年11月時点で最新のものに更新

【Check①】期限は年末。ショッピング感覚で今すぐできる「ふるさと納税」

普段は仕事で忙しい人も、比較的時間に余裕のある年末年始。お金のことを考えたとき、まず最初に、できるだけ早く着手したいのが「ふるさと納税」だ
「フリーランスと違って会社員には、税金を取り戻す方法があまり用意されていません。手取り収入が減っているなかで、ふるさと納税による控除は魅力です」
こう話すのは、ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんだ。
ふるさと納税は、減税や節税ではありません。本来納税する額を『寄付』という形で納めることで、寄付額の約3割の価値の返礼品と控除が受けられるシステムです。
ネットショッピング感覚で簡単にできますし、出身地や思い入れがある土地など、自分で選んだ自治体に寄付することで地方活性化に貢献しながら、寄付額の約3割の価値の返礼品がもらえ、さらには控除も受けられる。
いわば一石三鳥の制度なので、活用しない手はありません。年内に」
年内、と強調したのは、1月1日から12月31日までに行ったふるさと納税で自治体に寄附をした金額のうち、2000円を超える金額が(※寄付額と納税額の兼ね合いによる)翌年、住民税・所得税の控除として返還されるからだ。
たとえば5万円を寄付した場合、自己負担額の2000円を除いた4万8000円が翌年の住民税・所得税から控除される。つまり、2000円以上の返礼品をもらえば実質的にはプラスになるのだ。
「年収600万で独身、あるいは共働きであれば、約7万7000円」など、本人の状況によって、控除される上限は変わってくる。ふるさと納税のポータルサイトにいけば上限額がわかるので、その金額内に収まるように寄付金と返礼品を選ぶといいだろう。
注意すべきは、控除を受けるためには確定申告が必要になる点。ただし、給与所得者で、寄付する先が5自治体以内の場合には特例がある。寄付先の自治体へ「ワンストップ特例」申請書を提出すれば、確定申告が免除されるのだ。
ふるさと納税による節税メリットをすぐにでも享受したい人は、まずは、12月中にふるさと納税を行うこと。そして、ワンストップ特例を利用するのであれば、1月10日までに(※それより締め切りの早い自治体も)郵送で申請書を届け出る、という2点を押さえておきたい。
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「肉や魚、カニなどの返礼品が人気なのは相変わらずですが、よくある落とし穴が、『年末に一気にふるさと納税を申し込んで、食品が一気に届いた』というものです。
年末に駆け込みするのであれば、食品以外のものも組み込むといいでしょう。最近では、返礼品もかなり多様化していますよ」(黒田さん)
「多様化」の好例が、家電や家具だ。こういったものを返礼品として選べば、リモートワーク体制の整備や生活環境に投資することができる。
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「特に都市部では、コロナの影響で家にいる時間が増えています。在宅で仕事をするにも個室がないからと、トイレやお風呂場、ベランダでなんとかスペースを確保したという話を聞いたことも。
環境の変化で体調を崩したり、負担のかかる姿勢で長時間仕事をして体を傷めたりということがないように、今まで以上に健康に気をつかったほうがいいでしょうね」(黒田さん)
体調管理に資するという点で人気なのが、愛知県幸田町や滋賀県長浜市などのふるさと納税返礼品である「エアウィーヴ」。クッションや枕、布団やベッドマットレスなど、さまざまなラインナップがある。
リモートワークで自宅のデスクにかじりつく時間が増えた人におすすめなのがクッションだ。3万円の寄付の返礼品でもらえ、これ一つを椅子の上に敷くだけで長時間の座り疲れを軽減できる。
「エアウィーヴ クッション」寄付金額3万円~。
あるいは快適な睡眠環境のために、寝具を選ぶのもいいだろう。
人気なのは、今使っているマットレスや敷布団の上に一枚重ねるだけで極上の寝心地が実現できるマットレスパッドだ。
「エアウィーヴで眠るとより質の良い睡眠が取れる」というスタンフォード大学の研究結果もあるように、眠りの「質」にこだわる人に選ばれ続けているという。
「エアウィーヴ01 シングル」寄付金額14万6000円~。「エアウィーヴ ピロー S-LINE」寄付金額 6万4000円~。
近年、パフォーマンスを上げるために睡眠の質にこだわるビジネスパーソンが増えている。
ふるさと納税で美味しいものを受け取るのもいいが、それだと楽しみは一度きり。地方活性化への貢献、税金控除、返礼品、そして、パフォーマンスの向上という、一石四鳥を目指してはどうだろう。

【Check②】「iDeCo」と「つみたてNISA」は税金控除と資産形成の味方

次に着手したいのが、税金が軽減される「iDeCo」と「つみたてNISA」だ。
今から手続き書類を取り寄せて、記入し、返送して、その間にどの商品にするか検討する。手続きには数週間〜数ヶ月かかるため、時間がある年末年始に書類のやり取りだけは完了させておきたい。そこからは早い。
専用の口座はひとつしか持てないので、まずはどの金融機関にするかを決めること。
「私の場合は手数料や品揃えの観点から、iDeCoもつみたてNISAも同じ金融機関でやっています。リスク分散で別の金融機関で持つ方もいますし、ご自身の投資のポリシーに合わせて選びましょう」(黒田さん)
では、実際に税制上どれくらいのメリットがあるのか。
年収600万円で、企業型DC(企業型確定拠出年金)がない会社に勤める30歳であれば、iDeCoの掛け金上限は月2万3000円、1年で27万6000円になる。この場合、所得税と住民税が年間で5万5200円軽減されるので、30年続ければ、合計は165万6000円だ
さらに一般の金融商品の場合、運用益は課税されるが、iDeCoについては全額非課税で再投資に回る。利回りが1%なら、30年で非課税の効果は27万8834円となる。
※試算は、基礎控除、給与所得控除、社会保険料控除のみ。2020年12月時点の税制に基づいて計算している概算額。実際の金額とは異なる場合がある。
「『軽減』という表現だとピンと来ない人も多いかもしれませんが、年間27万6000円を投資して、5万5200円を儲けたと考えると、利回りが20%ということになります。これは運用利回りと関係ないので、たとえ運用利回りが0%だとしても、確実に効果が出る。
こんな金融商品はほかにありません。
投資は敬遠されがちですが、iDeCoの節税効果を試算すると、『やっぱりやらなきゃ』と思い直されますよ。特に税負担の大きい高収入の方におすすめです」(黒田さん)
つみたてNISAは、年40万円を上限とする非課税枠の投資で得られた運用益について、最長20年間非課税するという制度。こちらも年1%の利回りで計算すると、20年の運用で、運用益の非課税効果は17万3741円となる。
iDeCoを30年、つみたてNISAを20年、それぞれ上限額で利用すると、元本の合計は1628万。1%の運用利回りだと、非課税運用益は合計で222万7790円だ
一方、同じ元本・利回りで通常の投資の場合、運用益は課税後で177万5215円。これだけで50万円もの差があるが、iDeCoによる所得税・住民税の軽減が165万6000円あることを考えると、差はさらに開く
「iDeCoは老後資金用の金融商品なので、年に1回積立額は変えられるものの、60歳まで原則引き出せないというデメリットもあります。
しかし、社会の変化によって、フリーランスやスタートアップ、大手企業でも年棒制で退職金がない人が増加。また、一般的に退職金は勤続年数に比例するので、短いスパンで転職を繰り返す人にとっても支えになるはずです」(黒田さん)

【Check③】「キャッシュレス」で家計の見える化を

Check①②と同時に進めておきたいのが、キャッシュレス環境の整備だ
とはいえ、NewsPicks読者の場合、すでにいくつかのキャッシュレス決済手段を持っている人が多いだろう。しかし、考えなしにいくつもの手段を持っているのは「整備された状態」とは言えない。キャッシュレス手段を絞りこむことは2つの意味で重要だ。
「私のもとにマネー相談に来られた方には、まずは支出や収入について書き出してもらいます。すると、多くの人は年収に基づいた貯蓄可能額シミュレーションと、実際の貯蓄額に差があります」
数字上はお金を貯められる余裕があるのに、貯められない。つまり、多くの人は「収入」が足りないのではなく、ムダな「支出」が多すぎるのだ。
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お金が貯められない人に何に使ったのかを聞くと、大抵は『何に使ったのかわからない』と言われます。思わず共感したに人は、家計の『見える化』が必要です
キャッシュレスなら、レシートを取って家計簿をつけなくてもWEB上でお金の流れを追うことができます。それを見直すことでムダを省けますし、本格的に取り組むなら、キャッシュレス決済と紐付けられる家計簿サービスもありますよ」(黒田さん)
キャッシュレス決済をすべてつなげることで、簡単に家計を一元化できるのだ。効果はそれだけではない。
『ポイ活』という言葉もありますが、キャッシュレス決済に移行することでポイントも貯められます
そのメリットを最大化するためには、①クレジットカード ②交通系ICカード ③QRコード決済それぞれを、楽天ポイント、dポイント、Tポイント、Pontaポイントという4大ポイントを基軸にして絞ること。
先に説明した『ふるさと納税』『iDeCo』『つみたてNISA』も、これらのカードや口座を経由することでポイントが貯まります。最初に整備しておくといいですね」(黒田さん)
お金のことをきちんとすれば、年始からいいスタートダッシュが切れるはず。ぜひ有意義な冬休みを。