米検察、ズームの元中国幹部を起訴 天安門事件巡る会議を妨害
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Zoomがどうのという問題では全くない。デジタル空間における中国による言論統制と、それに対峙する国際社会との境界線摩擦の問題。その意味でフィジカルな領土紛争にも通じる。同じ事はMS TeamsでもGoogleでも何でも起き得る。
ニューヨークタイムズに詳しいが、妨害されたZoom会議の主催者はニューヨークの人だった。ゆえにFBIは中国国内で自国民に対する言論弾圧は勝手だが(人権問題としてはそれ自体にも反対の立場ではあるが)今回アメリカ市民に手出ししたゆえ動いた。
ただNYTでも不明なのがその会議に中国本土の中国人が参加していたか否か。Yesなら中国側としては当然と言い張るのだろうが、それでもZoom会議というプライベートな言論空間への国家強制介入は人権侵害であり、ましてアメリカ市民へのそれは許されるべきではない。
一方で起訴された人間が悪いかどうかは議論があるところかもしれない。
Zoom中国法人に勤めるマネジメントレベルの人間が中国政府当局からのセンサーシップ(検閲)に対応するために、別にこそこそではなく堂々と米国本社の担当に、ストップ機能を付けてくれとか従来要請していたと。
今回どういう方法でやったのかにもよるが、中国法人のマネジメントとしてコンプラ対応しただけだ、と主張するのだろう。
結論、国際社会がワンボイスで、国を跨いでの中国政府によるオンライン上のプライベイトな空間における言論統制には断固反対していくべき、その意味でFBIは当然の対応。
注目のコメント
中国から全面撤退したとしても、将来の「攻撃」回避のため中国政府の要請には応えざるを得ないー。中国情報機関とのリエゾン役社員が児童ポルノやテロ支援など虚偽の証拠を捏造してまで中国政府の要請に応えていたとする米司法当局の訴状はまるでサスペンス映画の脚本です。
これは昨年9月、中国国内サーバーを突如稼働停止されたzoom社が中国政府の要請に応じて作ったポジションの社員の話。グローバル企業の経営者は、少なからず内容把握しておくべきと思いました。
https://www.courtlistener.com/recap/gov.uscourts.nyed.456138/gov.uscourts.nyed.456138.1.0.pdf
本件を受けてzoom社は公式ブログをアップ、昨年11月の中国国内サービス復旧までに行われた中国政府とのやりとりを説明しています。それによれば彼らは、会議内容の自動判別と違法判定時の通報技術を中国企業と共同開発する計画を提案していたとのこと。
https://blog.zoom.us/our-perspective-on-the-doj-complaint/
その開発は最終的には実行されなかったそうですが、訴状には今年4月、中国政府から下った1分ルール適用指示について書かれています。当局から指定されたzoom会議は「1分以内」にブロックしなければいけないと。
その他、外部共謀者の存在、実在する人権活動家の名前をかたったzoom会議への潜入、ISIS関連のプロフ画像など、まさに映画の世界。
全体として目新しい話ではないでしょう。しかしzoom社固有の事情を超えたインプリケーションは非常に大きく、今後日本の報道機関も詳細を報じてほしいと思いました。
また、6月にこの件が最初に報じられた時のzoom公式ブログは読んだ人もいると思うのですが、今回はじめて気づいたことが。なんと日英版の違いが抜粋や意訳というレベルではない・・こういう事例を見つけるにつけ、二次ソース依存のリスクを改めて感じます。
https://blog.zoom.us/improving-our-policies-as-we-continue-to-enable-global-collaboration/私はこのニュース、重要だと考えています。
現在のようなデカップリングの時代には、Zoomがどちらの方向に歩むのかの分岐点です。
この妨害が今後も起きるようなことがあるなら、Zoomでは込み入った話はできないものと扱われます。
一方で、こうしたことは今後起きなくなるなら、自由な発言が比較的許される反面、警戒感を持たれます。
私はこの場合、Zoomを中国支社について独立させ、形式的な連携はとっても別会社として(中国支社だけは中国大陸の法規に合わせる形で)歩ませることが大事と考えています。そうでない限り、この揺れは残ります。