2020/12/26
【YouTube】1000人でも「成功」。マーケティングの新常識
今年からスタートしたNewsPickの電子書籍レーベル『NewsPicks Select』。
その第2弾として、インフルエンサーやYouTube上の企業コンテンツ支援を行うBitStarの渡邉拓 代表取締役CEOが『動画マーケティングの新常識~最強のYouTube活用術~』を上梓した。
書籍の発売を記念して、購入者限定のオンラインセミナーも開催する(詳細は本記事の末尾)。
もはや「遊び」の枠を超えてビジネスの有効なツールになりつつある「YouTube配信」。その企画立案からマネタイズまで、豊富な実例を交えながら徹底解説した一冊だ。ここでは内容の一部を紹介、その見どころに迫る。
その第2弾として、インフルエンサーやYouTube上の企業コンテンツ支援を行うBitStarの渡邉拓 代表取締役CEOが『動画マーケティングの新常識~最強のYouTube活用術~』を上梓した。
書籍の発売を記念して、購入者限定のオンラインセミナーも開催する(詳細は本記事の末尾)。
もはや「遊び」の枠を超えてビジネスの有効なツールになりつつある「YouTube配信」。その企画立案からマネタイズまで、豊富な実例を交えながら徹底解説した一冊だ。ここでは内容の一部を紹介、その見どころに迫る。
YouTubeから広がる「マネタイズ」
YouTubeのマネタイズと聞いて真っ先に浮かぶのは、動画を再生する際に流れるアドセンス広告、あるいは個人YouTuberが企業とのタイアップ動画を制作して得る広告の収入などではないでしょうか。
「トップYouTuberは、ひと月で何百万円、何千万円も広告収入で稼ぐ」といった話題は、今なおセンセーショナルに語られがちです。
写真:i-Stock/sam thomas
しかし私が皆さんにここでお伝えしたいのは、YouTubeの広告収入を最大化するための手法ではありません。
もちろん、再生回数や再生時間を伸ばすことで得られる広告収入も大切です。
ですが、YouTubeのマネタイズは今や、そうした広告媒体としての役割で完結する話ではなくなっています。
YouTubeを起点として、別のプラットフォームやリアルビジネスへと、マネタイズの可能性は外に向かって幅広く展開しているのです。
本のタイトルに“マーケティング”と銘打った理由は、まさにここにあります。
YouTubeを、その先に広がるビジネスのマーケティングツールとして活用する視点こそが、今後は重要になってくるのです。
そこで本記事では、そのマネタイズの設計方法、いわば「YouTubeマーケティングの本質」についてお伝えしていきます。
「デジタルからリアルへ」の大転換
YouTubeをマーケティングツールとして考えるにあたり、前提として理解しておきたいのが「リアルとデジタルの順序の逆転」です。
顧客の流れが以前は「リアルからデジタルへ」だったのが、ここ数年で「デジタルからリアルへ」と真逆の矢印になりました。
もっとも分かりやすいエンタメビジネスで考えてみましょう。
たとえば音楽の場合、以前はCDを買ってもらったり、コンサートや握手会に足を運んでもらったりと、まずはリアルなビジネスでマネタイズにつなげていました。
一方YouTubeにはコンサート音源を置いたり、新曲リリースのときに告知動画を制作するなど、デジタルはあくまでリアルビジネスのサブとしての位置づけだったのです。
しかし近年では、YouTubeや音楽配信サービスなどのデジタルが最初の接点となり、そこから興味を持ったユーザーがライブやイベントなどリアルの場に向かう、という逆転現象が起きています。
特にエンタメビジネスの場合、コロナ禍でライブ、イベントなどのリアルの場がことごとくなくなったことによって、この流れはますます強化されました。
この「最初の接点のデジタル化」により、私たちBitStarのようなプロダクションやエージェンシーのビジネスも、どんどんデジタライズドされていくと考えています。
YouTubeのマネジメントであれば、まずYouTubeを配信してユーザーと接点を持ち、その先に、たとえばイベントや出版、グッズ販売、ファンクラブなどがあるわけです。
最近流行りのD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)のビジネスも、SNSでファン化した方にモノを販売するという観点では同じです。
誤解しないでほしいのですが、「今後はデジタルがメインだから、リアルビジネスには注力しなくていい」ということではありません。
デジタルでユーザーと接点を持ち、マーケティングに活用することで、リアルビジネスを含む一連のマネタイズはむしろ強化されていくと言えます。
たとえばD2Cビジネスでも、オンラインでの販売よりもリアルでの販売のほうが実際には売れているというケースはよくあるのです。
YouTubeのマネタイズバリエーション
では、実際にYouTubeでユーザーと接点を持ち、リアルのビジネスにつなげている例を見てみましょう。
モデルでYouTuberの古川優香さんが発信している「RICAFROSH(リカフロッシュ)」というコスメブランドがあります。
これはインフルエンサー発信で商品を届ける、P2C(パーソン・トゥ・コンシューマー)と呼ばれるビジネスモデルです。
もともとは古川さんのファン向けにオンラインで販売を開始したこのブランドは、ほどなくして「ロフト」などの小売量販店や百貨店などのリアルな売り場にも展開していき、結果として数十万個のヒットに至っています。
また、あるゴルフのYouTubeチャンネルは、動画の再生数自体はそこまで多くないものの、一緒にコースを回るイベントをチャンネル内で企画したところ、多数の視聴者が参加しました。
ゴルフなどのスポーツは一人あたりのイベントの単価が高いこともあって、大きな収益を上げています。
デジタルの場でまずファンをつくり、そこからリアルな物販やイベントなど多様な収益につなげていく。
こうした例はまさに、YouTubeを起点としたマーケティングの新常識と言えるのではないでしょうか。
YouTube起点のマネタイズには、上記で解説した例をはじめ、以下のようなバリエーションがあります。
上に行けば行くほどデジタル寄り、下はリアル寄りになりますが、イベントにもオンラインとリアルのものがあるように、同じジャンルのマネタイズにもデジタルとリアルの手法が混在しているのが今の状況です。
一般的には次のようなステップで、YouTubeを起点としたマネタイズを展開していきます。
まずは「アドセンス広告(1)」でマネタイズできるよう、YouTube単体で伸ばす戦略で配信を行う。
それと同時にTwitterやTikTokなど、さまざまなプラットフォームのアカウントとも連携して相互創客を行い、ファンを増やしていく。
YouTubeが順調に伸びていけばそこにどんどん投資していき、登録者数が数万から10万人程度になってくると、徐々に「タイアップ(2)」の依頼が舞い込んできたり、ほかのリアルビジネスにも広がっていく――。
なお、マネタイズの内訳は、ジャンルによって実にさまざまです。
エンタメ系の場合は、再生数のボリュームで稼いでいくパターンのため、アドセンスの収益が50%以上を占め、そのほかにタイアップが約20~30%、残りの10~20%が「ファンクラブ(5)」や「物販(6)」、「イベント(7)」等で構成されるケースが多いです。
一方、クライアントがつきやすい美容ジャンルの場合はタイアップとアドセンスの割合が逆転して、タイアップが60~70%、アドセンスが20~30%、残りがその他マーチャンダイズなど、となってきます。
写真:i-Stock/urbazon
主にアイドル系ジャンルで人気のチャンネルでは、ライブ配信における「投げ銭(3)」による収益もあります。
YouTubeでは「スーパーチャット」と呼ばれるシステムで、たとえば「チャンネル登録者数何十万人突破記念」といったタイミングでライブ配信を行い、ユーザーは配信者とインタラクティブなコミュニケーションを取りながら直接課金ができるというものです。
しかし基本的にYouTubeは、テレビのように練られた企画と、編集されたクオリティの高い動画でファンに楽しんでもらうものです。ライブ配信での「投げ銭」による収益は、あくまで上記のようなイベント発生時の臨時収益という位置づけになります。
最近では投げ銭で累計1億円を稼ぐこともあるライバーが話題ですが、彼らはYouTube以外のライブ配信専用プラットフォームで活躍しています。
そこで、YouTubeの作り込まれた動画で創客し、別のプラットフォームでは編集不要なライブ配信を行って投げ銭の収益を得る、というデジタルの世界での横展開も、有効なマネタイズ戦略になると言えます。
しかし、このようなジャンルではなくても、マネタイズのバリエーションを広げることは可能です。
たとえば読者の皆さんが、自分のパーソナリティを生かした動画でコアなファンを獲得できたとします。
そのとき、「アドセンス広告(1)」の収益だけでもそれなりに大きくなってくるはずですが、コアなファン向けにデジタル上での「ファンクラブ(5)」や「グッズ販売(6)」、「イベント(7)」などのリアルなマネタイズを展開し、そこからさらに販路を広げていくことなどが考えられます。
そうすればチャンネル登録者数が何十万人という規模でなくとも、コアなファンを少しずつ増やしながら、ビジネスモデルとして機能させることができるのです。
収益源をポートフォリオ化せよ
私がBitStarを創業したのが2014年。当時は副業としてだったり学生でYouTubeをやっている人がほとんどで、YouTuberを専業として飯を食える人はごく僅かでした。
そこから2〜3年経つと専業で活躍する方たちが数多く登場し、いわゆるYouTubeネイティブのスターが生まれてきました。
そして今やYouTubeに芸能人や企業も参入し、以前は若年層が視聴するイメージが強かった視聴者の幅も広がり、老若男女、多様な人たちが見る一大プラットフォームとなっています。
一方で、競争が激しくなってきたこともまた事実で、YouTubeで成長する人としない人の差もまた大きくなりました。
YouTubeチャンネルを運営していても再生数がなかなか伸びない、伸びても途中で横ばいになってしまうといった壁に、今後ますます多くの人が直面することになります。
写真:i-Stock/PeopleImages
そうした状況の中では、上述のように100人、1000人という規模の限られたコアなファンの人たちに向けたコンテンツを配信してチャンネルを育てていき、月額のアドセンス収益を得つつ、彼らに喜んでもらえるようなグッズやイベント、ファンクラブなどを企画して、「収益源をポートフォリオ化させること」が重要になってくるのです。
これは、トップYouTuberにも同じことが言えます。
新規プレイヤーがどんどん参入してきた今、自分の視聴者の年齢層も変わり、かつては右肩上がりだった登録者数が次第に落ち着いてくる人も出てきました。
そこで彼らもYouTube単体だけでなく、前出の表にある「TVへの出演(8)」や「書籍の出版(9)」など、さまざまな活動にチャレンジし、ユーザーとの接点の幅を広げることでマーケティングのチャネルを広げ、また、収益源をポートフォリオ化しているのです。
今後10年、20年先まで長期にわたってYouTubeを続けていくうえでは、アドセンス広告やタイアップだけに近視眼的に注力するのではなく、早めの段階でコアなファンに向けた運営方針にしたり、ほかのビジネスにも挑戦して自分自身を磨いていくことが非常に大切になってくると考えています。
YouTubeは「事業運営」に似ている
YouTubeではまず動画を上げるところからスタートしよう、継続が命、とよく言われますが、では具体的に何からスタートすべきか、どう改善していったら良いかが、ほとんど議論されてこなかったように思います。
成功はアート、失敗はサイエンスとよく言いますが、私は特にサイエンスの部分を重要視しています。
サイエンスとは言い換えれば、検証ができ、再現性があるということです。
成功は運の要素やその人の持っている特別な才能に起因することがありますが、失敗は特別な才能がなくても科学して改善していけるのです。
YouTubeを始めることは新規事業をやることにも似ています。
ですからYouTubeチャンネル運営におけるサイエンスは、ビジネス全般にも活かせるものと確信しています。
1億総配信者の今、本書をきっかけに多くの方がチャンスをつかめることを祈っています。
***
本書『動画マーケティングの新常識ー最強のYouTube活用術ー』では、今まであまり語られることがなかったYouTubeチャンネルを成長させるための戦略や方法論、チャンネル規模だけではない新たなビジネスやマネタイズの可能性、BtoCだけでなくBtoB企業のYouTubeチャンネル活用に至るまでの「新常識」が一冊にまとめられている。
どの市場を選ぶか、個々の動画の質をどう高めていくか、どのようにPDCAを回していくのかという一連の流れは、まさに事業の運営と同じ。
YouTubeをマーケティングに生かすことでリアルの事業を成長させている企業も増えている今、チャンスをつかみたいすべてのビジネスパーソン必読の一冊だ。
『動画マーケティングの新常識〜最強のYouTube活用術〜』の発売を記念して、書籍ご購入者限定のオンラインイベントを開催いたします。
今回のオンラインイベントは、本書の著者であるBitStar代表・渡邉拓氏とサラリーマンYouTuberとして人気上昇中のサラタメさんの対談形式でお届けします。
コロナ禍でさらに注目度が増しているYoutubeの活用方法について、参加者からのご質問にもお答えしながら、インタラクティブにお届けいたします。ぜひ奮ってお申し込みください。
https://peatix.com/event/1758251
今回のオンラインイベントは、本書の著者であるBitStar代表・渡邉拓氏とサラリーマンYouTuberとして人気上昇中のサラタメさんの対談形式でお届けします。
コロナ禍でさらに注目度が増しているYoutubeの活用方法について、参加者からのご質問にもお答えしながら、インタラクティブにお届けいたします。ぜひ奮ってお申し込みください。
https://peatix.com/event/1758251
編集:金谷亜美
デザイン:青松 基
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