2020/12/23

【独占】アタマプラス×立命館、新しい「大学入試」をつくる

NewsPicks 編集長
「雷に打たれたような衝撃でした」
立命館大学(京都)の熊谷秀之・入学センター次長兼総合企画部次長は、とある人物と今夏に向き合った商談を、こう振り返る。
その人物とは、稲田大輔。2017年に、教育テックカンパニー「atama plus(アタマプラス)」を創業した起業家だ。
2021年の大学入試をどうするか?
新型コロナの感染が再拡大する中、多くの受験生が地元近くで受験する、1月の共通テストは、今のところ実施される見込みだ。
しかし、全国レベルでの大移動を伴う、大学ごとに行われる二次試験はどうか。現時点で、方針を表明している大学は少ない。
(写真:taka4332 / iStock / Getty Images Plus)
「これまでは、全国40ヵ所に試験会場を設けてやってきました。しかし今や、2021年だけではなく、それ以降も実施していけるのか、見通せない状況です」(熊谷氏)
そうした中、立命館が相談を持ち込んだ先こそが、アタマプラスだった。
というのも、アタマプラスは2020年5月、塾大手の駿台予備学校と提携して、大規模な「オンライン模試」を実施すると発表。教育界で大きな注目を集めていたからだ。
アタマプラスのテクノロジーを使って、今度は「大学入試」をオンライン化できないか。
ところが、である。
わずか5ヵ月後の12月22日、立命館キャンパスに現れた森島朋三理事長と稲田が記者会見で合意を発表したのは、オンライン入試とは、全く「別の内容」だった。
大学入試そのものを大きく変えていく、実験を始めます──。
彼らは一体、なにをやろうというのか。
NewsPicksは、この大学入試改革に注目。アタマプラスの稲田大輔への独占インタビューを通じて、2020年に教育業界で起きたこと、そして2021年後の展望をお届けする。

「一発勝負」の大学受験

「オンラインで大学入試をしたい」。そんな立命館の相談に対し、稲田は初回のミーティングで、根本を覆すようなテーマに踏み切った。
「そもそも今の大学入試に、意味はあるのか?」
中高生には「基礎学力」と「社会で生きる力」の双方が求められており、そのための具体的なソリューションを提供するのがアタマプラスのサービスだ。
これに対し、同じ問題意識にずっと向き合ってきた立命館だからこそ、「雷に打たれたような衝撃」を受けたというわけだ。
必然的に、両者の距離は、一気に近づいてゆくことになる。
稲田 今から数カ月前でした。コロナで大学入試が実現できない可能性があると、立命館から相談を受けたんです。
今の日本の大学入試って、受験生が会場に足を運んで試験を受けるスタイルですよね。会場で密な状態を作らずに実施するのは、無理じゃないだろうか、と。
僕らは今年7月に、模擬試験を初めてオンライン化する、「駿台atamaオンライン模試」という試みを始めたんですね。業界ではけっこう革命的なことで、注目を集めていました。
それを見た立命館が、アタマプラスのテクノロジーを使って、入試をオンライン化したい、と。
──ところが、「そもそも大学入試って意味があるのか」という、ちゃぶ台をひっくり返すような話に踏み込んだと。
オンライン入試はとてもよいことだし、僕らのテクノロジーを使えば、実現はできる。
けれども、入試の本当の問題は、「一発勝負」なことにあるんです。
それをオンラインでやるとなれば、「本当にカンニングしていないんですか?」とか、「受験生本人がちゃんと受けているんですか?」といったことに対応できるプロダクトを、新たに作る必要がある。
大学側も、神経を使うことになる。
そこに投資をするよりは、そもそも新しい大学入試を、試行してみませんか?と。
立命館にも共感してもらえて、その後は、とんとん拍子に話が進みました。
──立命館は巨大な組織です。調整も大変だったはずですが、すごいスピード感でしたね。