[ブリュッセル/ロンドン/ダブリン 17日 ロイター] - 欧州連合(EU)と英国は17日、通商協議について悲観的な見通しを示し、ジョンソン英首相の報道官はEUが「大幅に」立場を変えない限り、合意に達しない可能性が「非常に高い」と述べた。

フォンデアライエン欧州委員長はこの日、ジョンソン氏と電話で協議。ツイッターで「大幅な進展が見られた」としながらも、漁業権問題を巡って双方の主張になお「大きな隔たり」があり、溝を埋めるのは容易でないと認めた。協議は18日も継続する。

ジョンソン氏の報道官は電話協議後に「首相は交渉が深刻な状況にあると強調した」と明らかにし「時間は極めて少ない。EUが大幅に立場を変えない限り合意には至らないだろう」との認識を示した。

ジョンソン氏は自由貿易協定(FTA)を締結できなければ英国とEUは、EU-オーストラリア間のような条件で貿易を行うと述べたという。

EUとオーストラリアはFTAを結んでおらず、貿易の大半は世界貿易機関(WTO)のルールに基づいて行われている。

会談を受けて英国のフロスト主席交渉官はツイッターに、状況は非常に深刻で「進展は阻まれているようだ」と投稿した。

為替市場ではポンドが対ドルで小幅安となった。

<18日までの合意、可能性低い>

EUの外交筋と関係者は17日、英国との新たな貿易協定が18日までにまとまる可能性は乏しいと述べた。漁業権を巡り交渉担当者間の隔たりが埋まっていないという。

これとは別に、欧州議会の関係者はロイターに対し、EUのバルニエ首席交渉官がこの日、議会に「今後数日内の合意は可能だが、特に漁業権に関しては難しい」と伝えたと明かした。

AFP通信はバルニエ氏が18日までに合意が可能だと述べたと報じたが、匿名のEU外交筋によると、バルニエ氏と英国のフロスト首席交渉官は情報漏洩を抑えた、いわゆる「トンネル交渉」で漁業権に焦点を当てており、同分野での溝埋めが全体的な合意への大きな課題だという。

EU関係者によると、合意に達しなければ魚の種類に応じて異なる規則を適用する「区別化された」システムが作られるだろうが、18日までにそれが実現するとは想定していないという。

欧州議会の関係者はこの日のバルニエ氏との会合後、「18日(の合意)はないだろう。未解決の問題が多すぎる。今週末かそれ以降になる」と語った。

バルニエ氏はこの日ツイッターに「好ましい進展があったが、最後の障害が残っている」と投稿した。

英国のゴーブ内閣府担当相(国務相)は議会委員会で「残念ながら合意に至らない可能性の方が高い」とし、合意に至る確率は「50%を下回る」と述べた。

英議会が12月31日までに貿易協定を承認できなければ「時間切れで合意は成立せずWTOのルールに基づいて貿易を行うことになる」と語った。

その後、協議をまとめる最後の期限はクリスマス直後の数日とのい方を示した。ただ残る相違点のいくつかは「(政府の)責務のまさに核心的なものだ」と指摘した。

一方アイルランドのバラッカー副首相は公共放送RTEのインタビューで通商交渉の見通しについて「私はまだ五分五分の可能性の楽観的な側にいる」と述べた。公正な競争条件に関しては「合意が間近」だが、漁業権を巡っては難しい問題が残っていると指摘した。

その上で「双方とも合意に向けて少しずつ前進している。どちらもクリスマスまでにまとめたいと考えているはずだ」と語った。

欧州議会は21日までに合意に達した場合、12月下旬に臨時会議を開催することが可能と表明した。EU外交筋によると、合意がそれ以降でもEUは議会の同意なしに1月1日から貿易協定を発効させる可能性がある。

*内容を追加しました。