「佐賀誓いの鐘」予算案削除 知事はSNSで批判した男性を呼び出してたずねた

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佐賀誓いの鐘設置事業費を削除する修正案の可決を受け、報道陣の取材に応じる山口祥義・佐賀県知事(中央)=佐賀市で2020年12月16日午後0時41分、竹林静撮影
佐賀誓いの鐘設置事業費を削除する修正案の可決を受け、報道陣の取材に応じる山口祥義・佐賀県知事(中央)=佐賀市で2020年12月16日午後0時41分、竹林静撮影

 新型コロナウイルス対策を支援する国の交付金を財源とする「佐賀誓いの鐘(仮称)」設置事業は、山口祥義(よしのり)・佐賀県知事が「新型コロナ感染者らへの差別根絶を目指す」と発案した肝いり事業だった。しかし、16日の県議会で事業費を削除する予算修正案が全会一致で可決された。事業を巡り浮き彫りになった「コロナ対策交付金で今何をすべきか」を巡る知事と県民の意識のずれは、最後まで埋まらなかった。

 「誓いの鐘」事業は、県出身者も入所していた国立ハンセン病療養所「菊池恵楓園」(熊本県合志市)に佐賀県がかつて寄贈した鐘のレプリカを県庁に設置する計画で、県は約780万円を予算案に計上していた。山口氏は2~4日の県議会一般質問で「新型コロナへの誹謗(ひぼう)中傷が問題となる中、子供たちに差別がない県をつくってほしいとの願いを共有したい」と答弁し、設置への意欲を示していた。

 だが、コロナ禍で経済的な痛手を受けた業界からの不満は尽きない。約1300店でつくる県飲食業生活衛生同業組合は12月18日、山口氏に売り上げが減少した店舗への支援を求める要望書を提出する。要望活動は9月に続き2回目で、組合の吉田彰友理事長は「年末年始も予約が入らず大赤字の見込みだ」と話す。9月の要望では「(飲食店は)12月まで耐えられない」と訴えたが、県側から具体的な支援策は示されなかった。「誓いの鐘」に、吉田理事長は「9月に手を打ってくれなかった分、余計に腹立たしい」と憤る。

 県議会では「感染が拡大している今やる必要はない」「差別根絶に効果があるのか」といった批判や疑問が噴出した。「交付金ではなく一般財源を充てるべきだ」との指摘もあり、県幹部によると県庁の内部でも一般財源化への議論はあったという。

 その思惑もあってか、民放の情報番組が県の事業を批判的に取り上げた直後の11月30日正午、山口氏は自ら県民を県庁の来賓室に招き、1対1で意見を交わした。面談したのは、SNS(ネット交流サービス)で県の交付金の使い道を批判した県内在住の男性だ。特に知事と関係が深かったわけではなく、県によると知事がこうした「呼び出し」をかけるのは異例だ。

 「鐘を作るのは結構。でも、今じゃないのです」。男性は11月下旬、自身のフェイスブックにこう投稿した。「コロナへのこじつけ感があまりにも強すぎる。国の交付金として使い方を間違えているわけではないが県民としては納得できない」。すると数日後、知事から「近々会いましょう」とのダイレクトメッセージが届いた。

 男性は仕事の合間を縫って県庁を訪れ、面談は約1時間に及んだ。知事は…

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