(ブルームバーグ): 日本郵政グループ傘下のかんぽ生命保険は、自社株買いを実施し、持ち株会社である日本郵政の出資比率を50%以下に引き下げる方針を固めた。複数の関係者が16日、明らかにした。

経営の足かせとなっている郵政民営化法による「上乗せ規制」を解消する。新商品の提供など新規事業の自由度が増すことになり、魅力ある商品を市場に投入するなどして競争力を高める。

事情に詳しい関係者によると、かんぽ生命は、早ければ月内に開く取締役会で自社株買いを決議する方向で調整に入った。規模は3000億円程度になる見込み。自社株買いには、持ち株会社の日本郵政が応じ、持ち分を一定程度売却する。これにより、郵政の出資比率を現在の64%から50%を切る水準に引き下げる。

17日のかんぽ生命の株価は取引開始直後から取引高が急増し、一時10%高と2019年6月11日以来の高値を付けた。足元では8.9%高い2060円。

自社株買いによって経営の健全性を示すソルベンシー・マージン比率は低下するが、来年1月に資本性のある劣後債を1000億円規模で公募する予定で、健全性の確保も同時に進める。

ブルームバーグの報道を受けて、かんぽ生命は16日夜、「資本政策及び株主還元の充実について恒常的に検討しているが、現在において決定した事実はない」とするコメントを発表。日本郵政広報部はブルームバーグの取材に対して「コメントすることはない」と回答した。 

日本郵政傘下のゆうちょ銀行とかんぽ生命の金融2社には、民業圧迫を避ける観点から郵政民営化法により一般の銀行や保険会社よりも厳しく業務を制限する「上乗せ規制」が課せられている。かんぽ生命は、被保険者1人当たりの加入限度額が2000万円と定められているほか、新商品やサービスを販売する際には国の認可が必要となる。認可を得るのにも時間がかかるため、経営の負担になっていた。

日本郵政の出資比率の低下によって上乗せ規制は解消され、新商品の発売も認可制から事前届け出制に移行。新商品を機動的に市場に投入することが可能になる。日本郵政は11月13日に発表した2021年度からの次期中期経営計画で、金融2社への出資比率を今後5年以内をめどに50%以下に引き下げる目標を示していた。

日本郵政グループでは昨年夏、郵便局で扱ったかんぽ生命の保険商品で不正販売が多数あったことが発覚。外部の弁護士らによる特別調査委員会は3月に公表した報告書で、「市場のニーズに対応した商品開発を行うなど、時代や環境の変化に対応できるビジネスモデルへの転換を図ること」などを提言していた。

(4段落目に株価の動向を追加、6段落目のかんぽ生命などからのコメントを差し替え更新します)

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