2020/12/19

【沸騰】知られざる「アマゾン経済圏」の金脈

NewsPicks NY支局長
今年11月、衝撃的な資金調達がひそかに発表された。
ある米国スタートアップが、創業からわずか3カ月で、1億7500万ドル(約180億円)の資金調達をしたというのだ。その名はHeyday。アマゾンに出店する「サードパーティー」の販売業者を買収することを生業にする企業だ。
だが、それだけ聞いても、なんやらピンとこないかもしれない。
実は、彼らが巨額を手にした背景には、EC界のトレンドがある。アマゾンの「マーケットプレイス」における知られざるエコシステムの急激な拡大だ。
2020年、アマゾン全体のGMV(流通取引総額)は4兆7500億ドル(500兆円弱)まで伸びる見込みだが、なかでもサードパーティーがアマゾン上で販売できる「マーケットプレイス」は、実に62%を占めるまでになっている。
約300兆円の超巨大市場だけに、あまたの販売業者が参入しているわけだが、なかでもアマゾンというプラットフォームを徹底的に攻略していくことで、急激な成長を実現していく存在が現れ始めた。
彼らは、大半が無名だが、アマゾンを攻略できる潜在性から投資家たちの関心を集め始めており、有望ブランドを買い漁る買収業者までも現れだした。そして、今、その買収業者たちにも1000億円単位の巨額が注ぎ込まれているのだ。
その代表企業の一つが、冒頭のHeydayなのである。
一体、アマゾン経済圏の裏側で何が起きているのか。その真相を知るため、NewsPicksは、Heydayでアドバイザーも務める、Marketplace Pulse創業者のジョー・カジウケナスにインタビューを敢行し、新たな「金脈」のすべてを聞いた。

「金が金を呼んでいる」

──今年は、コロナの影響でEコマース全体が大きく伸び、中でもマーケットプレイスが急進した年でしたね。
今年は、あらゆる意味で記録的な年となりましたね。
特に4〜6月は、アマゾン全事業の中で、初めて「マーケットプレイス」が最も成長したセグメントになり、ジェフ・ベゾスCEOも「サードパーティーの売上高が、アマゾンによる販売(ファーストパーティー)を上回るペースで成長した」と言及しました。
今アマゾンをめぐる報道は、米国では競合潰しや偽造品販売、フェイクレビューばかりなのですが、それらは事実だけど、「木を見て森を見ず」になっていると感じます。
というのも、今もマーケットプレイスは伸び続け、その経済圏の中で、新たなブランドが次々と立ち上がり、資金を獲得しているという事実があるからです。ここにはすさまじいビジネスのチャンスがあるのです。
──何が起きているのですか。
アマゾンのマーケットプレイスを主戦場にするブランドには今年、発表されているだけで、10億ドル(約1000億円)もの資金が注ぎ込まれました。未発表を含めると、さらにその2倍はいっているはずです。