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JR東日本×KDDI、「分散型スマートシティ」で協業、新幹線内でもリモートワーク

 JR東日本とKDDIは、分散型スマートシティに関し、共同事業を進めることで合意した。

 品川開発プロジェクトを中核に取り組む。15日の会見には、JR東日本代表取締役社長の深澤祐二氏が登壇。ゲストとしてKDDI代表取締役社長の髙橋誠氏も登場し、両社の意気込みが語られた。

 両社では、ポストコロナ社会を見据えた「空間自在プロジェクト」として、場所や時間にとらわれない街づくりを進める。品川開発プロジェクトの協働推進、日本各地に分散拠点となるサテライトシティの開発を進めるほか、コアシティと駅周辺でモビリティサービスの開発を検討し、共同での事業化を目指す。

 両社では、「空間自在コンソーシアム」を設立する方針。KDDIの高橋社長は「いろんなアイデアをオープンイノベーションで広げたい。自治体、サービサー、クリエイター、ユーザー企業などが参画してほしい。両社ともに(インキュベーションプログラムを実施しており)スタートアップに、自社の資産を活用してもらうことに慣れている。新しい体験価値を実現したい」と両社だけではなく、幅広い事業者と“協創”する姿勢を示した。

コアシティの品川を開発、各地のサテライトシティへ分散

 2024年度ごろの街開きを目指す品川開発プロジェクトを共同で進め、コアシティとする。5Gを前提とした通信インフラとサービスプラットフォーム(都市OS)を構築し、アップデートし続けるまちづくりを目指す。その周辺では街区内の移動をサポートするパーソナルモビリティ、荷物自動配送ロボットなどモビリティサービスを検討する。

 一方、サテライトシティとして、2021年春以降、東京、神奈川、埼玉、千葉エリアを対象に分散型ワークプレイスのトライアル拠点を解説する。

 サテライトシティには「分散型ワークプレイス」と呼ばれる拠点が設置される。現在の施設でたとえればコワーキングスペースのような場所で、さまざまな企業のスタッフが入れ替わりで利用したり、同時に利用したりできるようにする。

 その際、企業ごとのイントラネットへの接続・切り替えを自動的に実施する機能や、大画面で臨場感のあるビデオ会議などの実現を目指す。

 これは、離れた場所に位置するリアルの空間同士を通信で繋げ、バーチャルな形で空間を一体化するというもの。「場所や時間にとらわれず、より自由を享受できる、人起点のネットワーク」(JR東日本代表取締役社長の深澤祐二氏)というものだ。

 KDDIの髙橋誠社長も「空間自在なワークプレイス、これが基本になる」と語る。

 その土台となるプラットフォームは「空間自在OS」として、KDDIの通信関連技術と、リアルに根ざしたJR東日本がタッグを組み、密を避けながら新たなライフスタイルの実現を目指す。

新幹線、まずは既存車両で

 移動中でも仕事できるように新幹線の車両の一部でリモートワークを推奨する車両の実験も実施される。

 現在の新幹線でも、移動中に仕事しようとする人は少なからず居る。だが、電話などで通話は控えるようなマナーが呼びかけられているなど、必ずしても仕事場として最適化された空間ではない。

 一方、今回の取り組みは、新幹線で移動中でも、オフィスのような形で仕事できる環境作りを目指す。第1弾としては、既存の車両をベースに実験が2021年に実施される。

 その次のステップとして、特定の車両を用いた実験も「視野に入れている」と深澤社長は説明。15日の発表会では、プレゼンテーションの資料で、低めのパーテーションで区切られ、しっかりとしたテーブルが配された座席、という特別な車両のイメージが掲示された。

5Gの利活用イメージを具体化

 離れた場所同士を5Gで臨場感ある形で繋ぐといった利用シーンは、5Gのユースケースとしてこれまでもさまざまな場面で語られてきた。

 KDDIがJR東日本とタッグを組んだ今回、夢として描かれてきた未来像が、現実へ大きな一歩を踏み出したことになる。

 KDDIの高橋社長は、「これまで5Gの事例として挙げられた部分はあったかもしれないが、今回ご紹介した『違う街へ出勤しているのに、あたかも同じオフィスにいる』という発想は、とてもイメージしやすいものだった。体験価値に投資するのは重要。通信会社だけでは実現できず、JR東日本と一緒だからこそできること。今回“空間自在OS”と呼んでいるように、これから土台を作ることになり、そこに向けたしっかりとした投資が必要とイメージしている。しかし各社が“OS”を作る。どう横を繋いでいくのか。そのあたりも構想しながら進めたい」と意気込みを語る。