やがて来るアフター・コロナの時代に向けて、今、私たちは何を考えるべきなのか?
前回に続き、11月14日に東京は杉並区にある光塩女子学院中等科・高等科で行われた、APU(立命館アジア太平洋大学)学長の出口治明氏のオンライン講演会の内容を紹介する。
話題はいよいよ具体的に「考える力」を養うにはどうしたら良いかという話題に進んでいく。また現代日本の問題点や、親が子供たちにできることについての出口氏の考察が述べられている。
「考える力」を強くする3つの方法
出口:じゃあ、考える力や探究力、問いを立てる力は、どうしたら身につくのか? ということを考えないといけないですよね。
これは料理と全く同じです。ぼくもステイ・ホームで自炊をしています。長くステイ・ホームが続いたので、だいぶ料理の腕が上がりました。この間も学生にカレーを作って振る舞ったらたいへん喜んでくれました。
みなさんも料理をしたことがありますよね? 最初はレシピを見てその通りに作りますよね。それで味見をして調整する。あるいはお母さんやお父さんに教えてもらうという人もいるかもしれません。でも、お父さんやお母さんはレシピそのものです。
つまり料理はマネをするところから始まります。考える力も全く一緒で、誰か考える力の強い人の本を丁寧に読んで、その人の思考のプロセスを追体験する。それで考えるパターンを学んで、考える力が強くなるのです。
同じマネをするなら、考える力の強い人のマネをする方がいいですよね。スキーを学ぶときも友達から学ぶとタダだし楽です。でも友達の悪い癖がそのまま身につきます。先生に教えてもらうとお金はかかりますが、早く上達しますよね。正しい滑り方を学ぶからです。
高校生になるとかなり本が読めるようになると思いますが、考える力のとても強い人にデカルトという人がいます。デカルトの『方法序説』(岩波文庫)を読んだことがあるという人いますか? あまりいないですね。
図書館にあると思いますが無ければ、本屋さんで買って読んでみてください。厚い本は嫌ですよね。厚くて難しい本はもっと嫌ですよね。でもこれは岩波文庫で一番薄い本のひとつですから、丁寧に読んでみてください。
デカルトは考える力の天才です。「我思う、ゆえに我在り」という言葉をみなさんも聞いたことがあるでしょう。これ1冊を丁寧に読むだけでも、みなさんの考える力は倍くらいは向上すると思います。これを読んで、考える型とか考え方のパターンを学べばいいと思います。