2020/12/13

【本質】日本企業の活路は「規模拡大」だけではない

NewsPicks ジャーナリスト
かつて、日本にも「シリコンバレー」が存在した──。
アメリカ西海岸の「シリコンバレー」の由来は、周辺に半導体関連企業が集積していることだ。これを、半導体の原料であるシリコンの谷として表現したのが、シリコンバレーだ。
実は、日本でも1990年代まで半導体産業の聖地が存在した。それが、東京都と神奈川県を流れる「シリコン・リバー」の多摩川だ。
武蔵小杉エリアを中心に、東芝や日立、NEC、富士通といった半導体メーカーが半導体工場と研究開発拠点を持ち、そこで生まれた半導体が、世界を席巻していた時代があった。
しかしその後、日本の半導体産業は苦戦を続け、武蔵小杉は半導体の街から日本有数のタワマン街に姿を変えた。
そんなタワマン街の一角に今も本社を構える、ものづくり企業がある。東京応化工業だ。
売上高は1000億円規模と決して大きくないものの、「フォトレジスト」という半導体の製造に欠かせない素材・化学品を手がけ、世界の半導体メーカーに供給している。
半導体メーカーは国際競争に敗れたが、素材を提供する東京応化工業は、ニッチ分野で勝ち続け、今でも武蔵小杉を拠点に成長を続けているのだ。
左の建物が東京応化工業の本社(写真:Ken Hiraoka)
日本の素材産業には、東京応化工業のように年商が数百億円からせいぜい2000億円規模と中堅規模ながらも、世界の大手メーカーから、「欠かせない」パートナーと位置付けられるような企業が数多く存在する。
ここに、これからの日本の勝ち筋を見いだせないか。そこで、東京応化工業のトップ、種市順昭社長にインタビューし、日本の素材企業の強さの秘密に迫る。

タワマン街に残る「素材企業」

──今やタワマン街の武蔵小杉ですが、かつて周辺に半導体の拠点が集積していたそうですね。多摩川というシリコンリバーの中心部でした。
多摩川がシリコンリバーなら、多摩川沿いを走る南武線は「シリコントレイン」です。