[10日 ロイター] - 民泊仲介大手の米エアビーアンドビーが10日、ナスダック市場に上場した。調達資金が35億ドル規模となった同社の新規株式公開(IPO)で株式の購入を認められたホスト(宿泊物件の提供者)はこの日、取引開始後の数時間で資産価値が2倍以上に膨らんだ。こうした上場で大もうけの恩恵を受けられるのは、通常のIPOではウォール街のエリートだけだ。

新たに発行された株式の大半は通常、ミューチュアルファンドなど機関投資家に割り当てられる。しかしエアビーが証券当局に提出した資料によると、同社は2億3800万ドル相当の株式をホストに振り向けた。

エアビー株は9日にIPO価格が68ドルに設定され、上場初日の10日は112.8%高の144.71ドルで取引を終えた。

映画業界で働くジョージア州アトランタ在住の同社ホスト、ジェン・シュレク氏は「ホストがプラットフォームへの物件提供を高く評価されたと実感でき、エアビーアンドビーにとって好ましい動きだった」と述べた。

何人のホストが同社のIPOに参加し、割り当てられた350万株の一部を購入したのか、明らかではない。ただ事情に詳しい関係者は需要が供給を上回ったと話した。

エアビーは新型コロナウイルスの大流行局面でキャンセルされた宿泊予約に対する補填を拒否。これにより集団訴訟に直面している。今回、ホストの多くはIPOで同社株を購入できる機会を歓迎した。

シュレク氏は「移動制限の開始時点におけるエアビーアンドビーの予約への対応を巡っては、誰もが満足しているわけではなく、多くの人たちが物件提供をやめると口にしていた」と語った。

シュレク氏にとって同社IPOへの参加は初めての株式投資だった。同氏は米国内のホスト1人当たりに割り当てられた上限の200株を1万3600ドルで購入。持ち株の含み益は1万5000ドルを超えた。シュレク氏は株価が200ドルに達するまで持ち続けるという。

一方、できるだけ早く利益を確定したいというホストもいる。

エアー・コンシェルジェ社の最高経営責任者(CEO)を務めながらエアビーなどのプラットフォームに提供した約500件の物件を管理しているライアン・ダンズ氏は、取引開始後に持ち株を全て売却しようとしたが、注文はオンラインではなく電話で証券会社を介して行わなければならず、いらいらしながら順番を待たされた。

同氏は株式売却益について「3月から5月にかけての予約キャンセルに伴う払い戻しで失った金額のほんの一部だ」と話した。エアビーは新型コロナの大流行に関連した予約キャンセルでホストに対し、顧客に払い戻しを強いた。

エアビーに50件余りの物件を提供しているワイオミング州在住のホスト、リチャード・ファーティグ氏は、10日の株価上昇後も同社株を持ち続ける意向だ。「私が成長を支援してきた会社の株式を保有したい」と語った。

エアビーのブライアン・チェスキーCEOは10日、ロイターのインタビューでホストに株式を割り当てるプログラムについて、ホストによる貢献に謝意を示す上で、ホストの意見に基づいて策定したと説明。「当社のホストがこのコミュニティー構築を支えたので、彼らが望むならば当社を共同所有できるようにすることは好ましい」と述べた。

(Krystal Hu記者、Jane Lanhee Lee記者)