2020/12/11

【新】コロナ禍で蓄積する「見えない疲労」への対処術

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まるで預言者のように、新しい時代のムーブメントをいち早く紹介する連載「The Prophet」。今回登場するのは、自衛隊初の心理教官であり、心理カウンセラーの下園壮太氏だ。
『寛容力のコツ』『自衛隊メンタル教官が教える 心の疲れをとる技術』などの著作を持つ下園氏が、このたび刊行したのがストレスや疲れのメカニズムを詳しく解説した『ストレスとうまく付き合う100の法則』だ 。
陸上自衛隊の衛生隊員やレンジャー隊員などに、メンタルケア、惨事ストレスコントロールの指導、教育を行ってきた下園氏は「ビジネスマンは現代戦場で働く戦士」だと述べる。
見えない戦闘疲労が蓄積されているビジネスパーソンはどのようにそれを認識し、ケアすればいいのか。
インタビュー第1回は、コロナ禍におけるストレス・疲労の状態について詳しく聞いた。
下園壮太(しもぞの・そうた)/心理カウンセラー
MR(メンタルレスキュー)協会理事長、同シニアインストラクター。防衛大学校卒業後、陸上自衛隊入隊。陸上自衛隊初の心理教官として、衛生隊員やレンジャー隊員などに、メンタルケア、惨事ストレスコントロールの指導、教育を行う。2015年に退官し、現在は講演や研修、著作活動を通して独自のカウンセリング技術の普及に努める。近著に「寛容力のコツ」(三笠書房)、「自衛隊メンタル教官が教える 人間関係の疲れをとる技術」(朝日新書)。

生命直結の不安に直面すると?

──11月中旬から新型コロナウイルス感染症の罹患者数が増加しました。長引く感染拡大状況によって不安が高まっている人も多いと思うのですが、コロナ禍は人々の心理にどのような影響を生じさせているのでしょうか?
下園 コロナから受ける不安の特徴は、生命に直結する不安だということです。
会社からの雇用の問題や、プレゼンテーションを失敗したらどうしようという不安、試験の合否に対する不安などは命には直接は作用しません。
しかし、コロナは「死ぬかもしれない」という不安に直面することになる。これは、暴漢に襲われるなどと同じくらい強力な不安です。
一方で、皆が等しく感じているので、私たちはあまりそれが強いものだとは認識せず、軽視してしまいがちです。
もう一つの特徴は、不安が非常に長引いているということ。
ダイヤモンド・プリンセス号で罹患者が発生したのは2月ですが、そこからカウントすると11カ月もの間不安が高まっている状態にあることになります。
(写真:Carl Court/Getty Images)
そしてその間、私たちは強い「我慢」を強いられています。たとえば、3密を避けて行動することもそうですし、外出制限、さらには楽しく過ごすことに関しても、無意識で我慢をしている人も多いかと思います。
我慢は、欲求を力ずくで抑え込む作業です。「イライラする」「遊びたい」といった欲求をそれと同じくらいの力で反対側から抑制しなければならない。
抑えるべき欲求が大きいほど、我慢も強力でなければなりませんし、欲求や感情が続く限りは抑え続けなければなりません。すると人はどうなるか。
たとえまったく動いていなくとも、我慢しているだけで非常にエネルギーを消耗するのです。つまり、知らず知らずの間に疲労が蓄積する。
コロナによって、今までは生じていなかった種類の我慢を長期的に強いられている。まずこのことを認識することが重要です。

「疲労」の3段階

私は疲労状態を図のような3段階に分けて考えています。
1段階は、物事を集中して楽しめる状態。災害やパンデミックなどがない穏やかな状況下では、人口の7〜8割が1段階の状態にいます。
2段階は目の前の事象へ対応するのにいっぱいいっぱいな状態。このとき人々は「2倍反応モード」になり、受けた刺激が1段階のときと同じであっても、2倍感情が刺激され、2倍疲れます。2倍反応してしまうからイライラもするし、変化への耐性も弱くなる。
みなさんは、通勤電車や街で他人に怒りをぶつける人に遭遇する率が上がったと感じませんか? そういった人たちはこの2倍反応モードである可能性が高いです。
通常、ここに属する人口の割合は1〜2割なのですが、長期間不安と我慢状態が続くコロナ禍では、人口の3分の1ほどが2段階になっているような気がします。
この段階までくると、本人は意識できなくても、周囲は「最近ちょっとおかしいよね」と気がつくことが多い。でも、それを本人に伝えても、「そんなことないよ」とかたくなに否定する。
おそらく元気なときの本人なら、「そうか、忙しいからね。気をつけるよ、ありがとう」と受け入れるでしょうが、思考が固定されかけているため、受け入れがたくなってしまうのです。
結果的に、この状態で、抜本的な行動を起こせる人は少ない。運良く、無理を強いている状況が好転すればいいですが、そうでない場合は、3段階に落ちていくこともあります。

3段階特有の症状とは

3段階は、3倍反応モードです。つまり、。ここを私は「別人化」と名付けていますが、うつ症状が出てきてしまうような状態です。