[ワシントン/ニューヨーク 30日 ロイター] - 米格付け会社S&Pグローバルによる英調査会社IHSマークイットの買収計画は、バイデン米次期政権に厳しく審査されるだろうと専門家は指摘する。バイデン氏の政権移行チームが反トラスト法(独占禁止法)の執行を強化する姿勢を示しているからだ。

総額440億ドルの買収によってS&Pは、金融情報サービス市場のシェア第3位の地位を強固にする。S&Pは国や企業の債券格付けや資本・コモディティー市場のデータに強みがあり、IHSは金融資産とデリバティブ(派生商品)の値付けと参照データを得意とする。

金融データはトレーダーなどによってモデル分析やコンピュータを駆使したアルゴリズムに活用され、多額の資金フローに影響を及ぼしている。さまざまな金融情報をワンストップで提供する企業を目指す動きを反映し、業界再編が足元で加速している。

調査会社バートン・テイラーによると、金融市場データを提供する企業の売上高の合計は2019年に320億ドルに上った。シェアはブルームバーグがトップの32.8%で、ロイターニュースの親会社トムソン・ロイターが株式の一部を保有するリフィニティブがこれに次ぐ21.4%。S&Pは6%、IHSは2%だった。

S&PとIHSは統合後も市場3位にとどまるが、反トラスト法の専門家によると、規模が大きい案件であるため、当局の審査では両社が既に直接競合している分野だけでなく、今後競合する計画がある分野に焦点が当たるとみられる。

ブルーム・ストラテジック・カウンセルのセス・ブルーム氏は「バイデン政権の司法省による非常に厳しい審査が待ち受けているだろう」と指摘。

S&Pグローバルのダグラス・ピーターソン最高経営責任者(CEO)は反トラスト法に抵触する恐れがあるか問われ「私たちが解決できない規制上の問題が出てくることはない」と自信を示した。

バイデン氏の政権移行チームの1人のメンバーは最近の講演で、反トラスト法の執行を強化する必要性に言及した。民主党の急進派はこれまで同法の執行強化を主張してきた。