2020/11/29

【全録】僕は、人種、性別、年齢を、デザインで超えていく

NewsPicks 副編集長(NY支局)
知られざる鬼才がついに動きだした。
来年、アメリカ初の女性副大統領になるカマラ・ハリス、前ファーストレディのミシェル・オバマ氏の就任演説の衣装を手掛けるほか、世界に冠たるブランドが「彼なしでは成立しない」と言わしめる日本人がいる。
大丸隆平、43歳。
20代前半にして、日本が誇る「伝説のパタンナー」と言われ、その後、米ニューヨークに渡ってからは、トム・ブラウンやプラバル・グルン、アレキサンダー・ウォング、ジェイソン・ウーなど、世界的なデザイナーの作品を裏から支えてきた。
その大丸が今年、初めて表舞台で動き始めた。
2015年に立ち上げたブランド「OVERCOAT」で、世界に攻勢をかけているのだ。既存の「サイズ」「ジェンダー」、さらには「人種」の概念を解放した斬新なデザインは今年、米ファッション紙の権威である米WWDも1面で取り上げたほど。
コロナで壊滅したファッション業界で、次なる光明も見いだす大丸に、NewsPicks編集部は3時間にわたるロングインタビューを敢行。世界で彼しか実現できない「モノ」をめぐる半生を聞いた。
──ファッション業界は、コロナで壊滅的な状況になりました。
みんな調子は相当悪いです。それこそ、ニーマン・マーカスがチャプター11を申請したぐらいですから。
そもそも卸売というビジネスフォーマットが危ないということは、コロナのずっと前から言われていたことですが、コロナがとどめを刺した形ですよね。だからこそ、D2C(ディレクト・トゥ・コンシューマー)のビジネスが伸びてきているわけですよね。
──そんななかで、自社ブランドOVERCOATの展開を進められています。
実は、面白い驚きがあったんです。
我々も、毎年出展しているパリのファッションショーがなくなり、困ったなと悩んでいた時に、ユナイテッドアローズ(UA)のオーナーの栗野宏文さんが連絡をくれて、「UAの展示会場を貸してあげるから、日本に来たら?」と言ってくれたので、今年7月に初めて日本で展示会をしたんです。
それ自体はバイヤー向けだったんですが、せっかくなので、知り合いのギャラリーに頼んで、初めてD2C、つまり消費者向けの販売会を開催させてもらいました。
ちょうど東京は、炎天下の上、第2波が来るという最悪なタイミングで、「友達と話せればいいな」ぐらいの気持ちだったんですが、なぜかめちゃくちゃ売れたんです。
それは、本気で手が震えるぐらい、でした。
みんなで雑談でもするつもりが、結局、僕はずっとレジ打ちをやることになりました。最初に声をかけた友達が、その友達に声をかけてくれて、コミュニティが広がっていって、という連鎖が実感としてあったんですね。
3回ぐらい来てくれた人もいるし、1回の買い物で5、6着、70~80万円分買ってくれた人もいます。富裕層の人が多かったというのもありますが、予想外の感触でした。
──何がその背景にあったんでしょうか。
いろいろ話を聞いていると、みんな「何を買っていいかわからなかったんだよね」と言っていたんです。
今や世の中には、星の数ほどブランドがあるのに、逆に情報があふれすぎていて、ググって「ここがいい」と出てきた洋服の情報が正しいかどうかすら、みんなわからなくなってきていますから…。
だから、逆に自分に近い友達が「これすげえ、かっこよかったよ」と言った情報のほうをみんな信じていて、それでうちに来て買ってくれたという感触があったんですよ。だから、実はモノの買い方は原始的なところに戻ってきているのかなと感じました。
情報化社会になればなるほど、実は、そういうコミュニティはすごく狭くなっているのでは、と。そして、今後はもっともっと狭くなるんじゃないかなと、思っています。
昔の呉服屋ではないですけれど、そういうコミュニティの中で、「良いもの」の価値が伝わっていく。