イラン、核科学者暗殺で報復宣言 イスラエル関与「重大な形跡」
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暗殺された科学者は、イランにおける核兵器開発の責任者であった、とイスラエルのメディアは報じています。実行犯はイスラエルの政府機関と見るのが妥当でしょう。米国政府の承認は得たうえ、でしょう。
イラン政府は、革命防衛隊司令官などが、報復の意思を表明しています。
殺害された科学者は、日産ティアナに乗って走行中、路肩に止めてあった自動車爆弾が爆発したことで、他の6人と共に殺害されました。
イランの(核)科学者が(おそらく全てイスラエルに)暗殺されるということは、これまでいくつも先例があります。ただし、今回は特に高い地位にあった科学者、ということになるようです。
なお、イラン政府は、軍事用の核兵器を開発していることは、公式には否定しています。イランの核開発阻止はイスラエルの国是のようなもので、2010年以降研究施設を狙ったハードアタックだけでなく、研究者をターゲットにしたソフトアタックも頻発しています。
2010年のコンピューターウイルス、スタックスネットを使った攻撃ではイランの8400台の遠心分離機全てが稼働不能になり、ナタンズの核研究施設でのウラン濃縮が停止。
これによりイランの核開発は2年後退したといわれてます。
一方同時期にナタンズの核研究者マスード・アリ・モハディ氏、マジト・シャフリア氏など少なくとも2名が何者かによる爆弾テロにより死亡、アッバーディ原子力庁長官も負傷する事件がありました。
関連性は不明ですが2011年にはシャリエーフ工科大学の原子力関係の学生が路上で射殺される事件も発生しています。
更に2012年1月、今度はテヘラン工科大学教授でナタンズ研究施設副所長のムスタファ・アハマディ・ロシャン氏がテヘランで自動車爆弾により暗殺されました。
いずれの犯行もイスラエルの諜報機関モサドがアメリカ、イギリスの諜報機関の支援を受けて実行したものだと考えられています。
今年に入ってからも攻撃は続き、夏頃イラン各地でテロと思われる重要施設での火災が相次ぎましたが、7月2日にはナタンズ核研究施設でも大規模な火災が発生したと伝えられています。
今回殺害された核科学者モフセン・ファクリザデ氏についてはIAEAが同氏を核兵器開発の中心人物(イランは当然否定)と指摘しており、恐らくイスラエル(そしてアメリカにとっても)最重要ターゲットだったと思われます。
最近ガザやイラクでもイラン勢力へのイスラエル軍の攻撃が頻発しており、イスラエルとの直接対決を避けてきたイランがどこまで耐えられるかが心配です。22日にイスラエルのネタニヤフ首相のプライベートジェットが、ポンペオ米国務長官とサウジのムハンマド(MbS)皇太子が会談するNEOM(サウジ紅海沿岸の新産業都市)を往復するフライトトラッキングデータが確認され、ネタニヤフ首相がこの会談に加わったのではないかとの憶測を呼んだ。
サウジ側はこれ(ネタニヤフ首相の会談参加)を否定しているが、イスラエル教育相ヨアヴ・ガランツがネタニヤフ首相の会談参加を認めたと報じられ、またイスラエルのメディアではイスラエルの諜報機関モサドのヨシ・コーヘン長官が同行したとも報じられている。
トランプ大統領は11/12に数週間以内のイランへの攻撃のオプションを検討し、結果否定されたと言われているが、周辺国による攻撃の可能性はあると言われている。
今回の攻撃に際し、どこまで事前の調整があったのか。
11/11 のIAEAの報告書で、イランは低濃度ウランの貯蔵量が2015年の核合意での上限の12倍に達したと評価した。イランはイスラム法上核兵器の開発はできないという立場であると表明している。
バイデンに政権が移行すれば、これまでの封じ込め策がひっくり返る可能性がある為、今のうちにできることをやろうとする動きが出てくる懸念があった。今回の攻撃で、イランとしてはバイデン政権になったとしても、安易な核合意復帰は政権のスタンスや国民感情的にも難しくなっただろう。なんらかの賠償を求めるなど、バイデン政権との交渉は難航化する恐れがある。
バイデンはイランに融和的な姿勢だが、その事が返って中東の不安定さをもたらすのだとすれば、なんとも皮肉な事だ。
もう一点気になるのは、暗殺手法。昨年のソレイマニ将軍の暗殺の際も車の走行中だったが、走行位置の確認と爆破のタイミングをどの様にして行なったのか。ソレイマニ氏の場合は、80年代から使われているSMSのss7プロトコルの脆弱性を使って位置特定が行われたと噂されているが、、、。