[ロンドン 20日 ロイター] - 欧州連合(EU)の銀行監督機関である欧州銀行監督機構(EBA)は20日、EUの銀行融資のうち総額8710億ユーロ(1兆300億ドル)が新型コロナウイルス救済措置の恩恵を受けたと述べた。不良債権となり得る融資に関する初めての調査を行った。

新型コロナのパンデミック(世界的大流行)対策として3月に各国がロックダウン(都市封鎖)を実施して以降、支払い猶予や政府保証などの救済措置が急速に導入された。

救済措置の対象となる融資の約17%は6月末までに、損失に備え引当金を計上し始める必要がある「ステージ2」に分類された。融資全体のステージ2の割合の2倍以上になる。

EBAは「銀行は引き続き警戒を怠らず、こうしたエクスポージャーの質を継続的に査定するべきだ」と述べた。

キプロスとハンガリー、ポルトガルの銀行が、融資全体に占める救済措置の対象になった割合が最も高かった。救済対象の融資額はフランスとスペイン、ポルトガルの銀行が最も多かった。

EBAによると8710億ユーロの合計は、調査対象となった130の金融機関による融資総額の6%に相当。中小企業向け融資の16%が支払い猶予を認められた。次いで商業用不動産の融資の12%、住宅ローンの7%が支払い猶予を認められた。

支払い猶予対象となっている融資の約半分は9月までに期限が切れる取り決めだった。85%が来月までに期限切れとなる。

EBAは、支払い猶予の期限が切れると「崖っぷち」効果が生じるリスクがあり、長引く景気低迷と相まって、不良債権が急速に増加する恐れがあると述べた。

EBAは新型コロナの第2波を背景に、すでにいくつかの国が支払い猶予期間を年末以降まで延長したと述べる一方、「支払い猶予の継続や長期化は、借り手に『支払いをしない』という悪習が身に付く恐れがあるため、金融安定の面でシステミックリスクという副作用をもたらす危険性がある」と警告した。

EBAは12月11日に、銀行別の融資に関する詳細なデータを示すための「透明性評価」の結果を公表する予定。